●「失敗国家」未満の国への支援をまず考える
―― ありがとうございます。ここからは皆さまの質問をお受けいたしまして、先生にお答えいただくということにさせていただきたいと思います。
―― 【質問】退職後に社会貢献のことを考えたいと思っています。講義では海外協力隊がキーワードとして出てきました。若い方々は、日本に帰国してからNGOに勤めたり、大学院に進学したりするなどキャリア形成も考えられると思いますが、シニア世代についてはどうでしょうか。また、今イラクやシリアといった紛争地に行くのは正直厳しいと思うのですが、どういった地域に派遣される可能性があるでしょうか。
小原 まず地域の話からすると、よく「失敗国家」という言葉をわれわれ学者は使うのです。失敗国家とは何かというと、先ほど(第2話で)国家の説明を皆さんにしましたが、なぜ国家が必要かということです。
つまり、国家の機能が十分ではなかったり、失われたりしていくと、国家の最大の目的の安全が保障されないわけです。そうなると、例えばアフリカの一部の国、中東でもそうです。今いわれた(紛争地の)イラク、シリア、(あるいは)イエメンなど、いろいろなところがありますけれど、ある意味での失敗国家になってしまうと、そうした安全を保つための機能がワークしないわけです。
例えば、警察にしろ、裁判所にしろ、それは腐敗が問題だったり、あるいは、ほぼそうした機能が紛争等によって動かなくなってしまっているという問題もあると思うのですけれど、それが結局、治安情勢をさらに悪化させていって、そういったところで人道的に活動するのは非常に危険になってくるのです。
けれど、そうしたところほど、すごくニーズがあるわけです。(本講義で)JICAやNGOの話もしましたけれど、いろいろな分野が実はあって、そこまでいっていない国で、よりしっかりとしたガバナンスというものを、日本の協力によって整備したい、もっとそれを強化したいという国はたくさんあるわけです。
だから、もちろんガザのようなところに皆さんが行って、「天井のない監獄」だといわれているようなそういうところで、では活動ができるかというと、なかなか難しいし、皆さんの命の危険もあるので、それは本当に慎重に考えないといけないと思います。そうではない、そこまでいっていない国もたくさんあるわけです。
そう...