日本の外交防衛政策…家康の教訓
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
唐船は「懐の中の毒蛇」…徳川幕府が熟慮した隣国リスク
日本の外交防衛政策…家康の教訓(2)隣国リスクとプーチンの教訓
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「異国に日本の土地を一寸なりとも渡しては日本の恥である」――江戸時代初期、こう考えていたのは長崎奉行の甲斐庄喜右衛門だが、第三代将軍の徳川家光は異国への押さえを「一国の誉れ」と述べ、特に明など隣国を重要視した。この教えは、ロシアのウクライナ侵攻や台湾危機など近隣国の動向が緊張感を増す現在の日本にも大いに生かすべきである。独裁者が暴走したらどうなるか、隣国リスクとして考えておかねばいけない。(全4話中第2話)
時間:14分39秒
収録日:2022年12月26日
追加日:2023年2月21日
≪全文≫

●異国への押さえは「一国の誉れ」


 皆さん、こんにちは。前回は徳川家康の安全保障の考え方の一端を、松平定信の紹介によって語ってみました。家康は、基本的に国内に関していうと、東国には江戸に自ら城を築き、同様に東を押さえる拠点をつくったので、基本的に江戸には味方も多く、安全保障上あまり懸念がありませんでした。実際、北からロシアが出現するのには、まだ時間がありました。それは懸念材料ではないと考えたようです。

 むしろ心配は、西国、すなわち九州、あるいは九州近辺の海域で、江戸時代を通して、幕府にとって重要な外交と安全保障の懸念材料と、その前進基地が九州に置かれたということ。あるいは、薩摩を通して琉球を押さえたということ。そして、長崎、対馬、こうした地域に対して外交的あるいは防衛的な押さえを設けたということが知られています。

 第三代将軍の徳川家光の時に大老格であった土井大炊頭利勝と、林大学頭、すなわち昌平坂学問所、のちの江戸幕府の林家という学問の総取締になった、その林大学頭の対話の中に出てくる、以下のような表現を紹介します。

 家光が、九州・筑前(福岡)の黒田と肥前(佐賀)の鍋島に、異国の押さえを申しつけました。長崎の警護はこの2つの藩が交代で担当することになったということです。この時、実際に家光の心配はどこにあったかというと、「黒船よりも明を心もとなくおぼえた」と書かれています。

 黒船というのは、ここでは比喩的に西洋の船という意味です。まだ、蒸気機関等は当然使われてないのですが、船の外装、リグ(艤装)に関するものが黒づくめというイメージが強かったのでしょう。その黒船よりはむしろ唐船、つまり中国なのだということを語っていたわけです。

 まず、その根拠として明は、日本に近い国です。それゆえに、長崎港内にいる唐船(中国船)というのは、これは非常に厳しい表現ですが、「懐の中の毒蛇ぞ」と。つまり、「和」のために来ているような船であるかのように見えて、実はそれは安全保障という観点から見れば、われわれが自分たちの懐の中に入れている毒蛇に他ならないという、非常に厳しい言い方です。いずれにしても油断してはならないというわけです。

 異国への押さえというのは、「一国の誉れ」と言っています。つまり、外国をきちっと押さえるのが日本という一国の誉れである。そして、それに破...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓