日本の外交防衛政策…家康の教訓
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
プーチンの核兵器恫喝に対抗するNATOとASEANの差
日本の外交防衛政策…家康の教訓(4)プーチンのジレンマとASEANの現実
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ウクライナ侵攻において、核兵器の使用を匂わせるロシアのプーチン大統領。しかし、現状ではその使用は踏みとどまっている。そこにはどんなジレンマがあるのか。そこで重要な役割を果たしているNATOは、中国の動向も見据え東アジアの安全保障にも関心を寄せているが、当のアジア諸国は安全保障への意識が結束していない。その現状を解説する。(全4話中第4話)
時間:13分16秒
収録日:2022年12月26日
追加日:2023年3月7日
≪全文≫

●ロシアによる核使用の脅威と民主主義国の条件


 皆さん、こんにちは。ロシアのプーチン大統領とその後のウクライナ戦争、あるいは日本との関わりなどについて、いろいろと触れてきたわけですが、日本国民の一番の関心事、懸念材料というのは、世界の人々と同じように、プーチン氏がかつて戦術核の使用を匂わせたことです。つまり、核恫喝が恫喝だけで終わるのかです。あるいは、実際に戦術核が使われるのかというのは、大変大きな問題点です。

 これは特に、原爆を使われて多くの被害者を出した日本国民が、揺るがせにできない点です。同時に、世界中にその核というものの使用の怖さというものが、理念や言葉だけではなくて、現実あるいは実際の事実として起こり得るということを意味しているのですね。そうなった場合、今後の国際秩序というのは、どうなるのか、どういう影響を及ぼすのかというのは、大変重要な問題です。

 基本的に民主主義国家同士は戦わないとよくいわれます。これは20世紀にフランシス・フクヤマが『歴史の終わり』(The End of History and the Last Man)という中で強調した見方です。もちろん、これの揚げ足を取って、「いや、第一次英米戦争と第二次英米戦争、つまり独立戦争と第二次英米戦争で、実際はカナダを主力とする軍隊がワシントンを陥れて、ホワイトハウスを焼いた」と。これは密かにカナダ人が、心の中で何か自負している独特の経験なのです。

 実際はカナダなのですが、法的にはイギリスで、五大湖においても海戦が行われました。だから、民主主義国家間でも戦争があったではないかという混ぜっ返しになったのです。フクヤマもおそらく言いたかったことで、そして、私もフクヤマのほうに寄せて考えるのは、確立された20世紀の自由と民主主義を価値観の基本とする国家が民主主義国家だとすれば、民主主義国家はたしかに互いが戦ったということはないということです。ほぼないと言ってよろしいわけです。

 したがって、ここから引き出されるのは、民主主義国家の間では、核戦争、核を使用するということはあり得ない、核による恫喝もしない、ということ。これは基本的に重要な民主主義国家の資格要件だろうと私は思います。核を使うということをあえて発言した、プーチン氏は、やはりそういう意味でも民主主義国家のリーダーとしての資質はない。そもそもG8として、G7プラス1になる...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎