日本の外交防衛政策…家康の教訓
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ロシアの野望に対する「抑止」に失敗した欧米の教訓
日本の外交防衛政策…家康の教訓(3)ウクライナ侵攻と欧米の責任
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
なぜロシアの野望に対する「抑止」を欧米諸国は失敗したのか。「民主主義の浸透は絶対に許さない」というプーチン氏には、ユーラシア国家としてのロシアの窮状回復と将来に向けた新しい国家の創設、それを阻止するものへ対決姿勢を見せるという一貫性がある。そのことを見誤った責任と「抑止」について、日本に必要な自己防衛の努力と合わせて論じる。(全4話中第3話)
時間:13分05秒
収録日:2022年12月26日
追加日:2023年2月28日
≪全文≫

●欧米や日本が静観し続けてきたロシアの動向


 皆さん、こんにちは。プーチン氏が、何を目的としているかというのは、なかなか分かりづらいところもあります。基本的に、彼が民主主義を認めてないということは、第一に確認することです。民主主義というルールがロシアの国内に浸透し、そしてそれがロシア社会のものの考え方になるということを、彼は許さないのです。この決意というのは、国内的に大変大きな彼の信念です。

 今回のウクライナへの侵攻を見るにつけて、第1にプーチン氏が民主主義の浸透は絶対に許さないということ、またロシアの独自の地政学的な利益があるということ、そして3番目に、その歴史と地理、文学、芸術、思想等に貫かれたロシアの独自性ということ。つまり彼の利益、ユーラシア国家としてのロシアというものの窮状回復、そして将来に向けた新しい国家の創設、このようなことを阻止しようとするものについてはきちっと対決していくという気構えは、実は一貫していたのです。

 欧米、日本も含めて、そういうサインをきちっと見てこなかったのです。したがって、簡単にいうと、NATOも含めた欧米、あるいは日本とアメリカ、そういうアジア太平洋の中の民主主義的な諸国による、ロシアの野心・野望に対する抑止は失敗したということなのです。

 なぜ失敗したのか。そして、きちっとサインも出していたのに、それに関して西側の欧米、あるいは日本は、ロシアの行為に関して非常に寛大でしたが、それを放置、あるいは軽視すればどうなるか。例えばロシアによるチェチェンの侵攻、2回にわたる大きな戦争、それに対して非常に冷淡でした。

 シリアに関しても、シリアにロシアがイランとともに公然たる干渉を行い、そして、シリアの民意として出てきたアサド政権打倒というスタンスに対して、ロシアは直接、アサド政権を支持するのみならず、イランもそうですが、特にロシアの場合は空軍、海軍を動員し、イランの場合は陸軍、革命防衛隊、陸上兵力を動員して民主化の動きを完全に粉砕して、現在は国が焼土と化しても、とにかくアサド政権は守られるという形になっています。

 その間、それぞれ性格が違いますが、オバマ政権は、レッドラインを突破すればアメリカの重大決意があると言いました。そしてトランプ政権は、オバマ氏のように口先だけでは言わないでやるぞと言って、たしかに形ではアメリ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する
無限の可能性に挑め…国家経営を創造し、新時代の憲法を!
松下幸之助
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
未来を知るための宇宙開発の歴史(14)宇宙開発は未来をどう変えるか
『2001年宇宙の旅』が現実になる!?カギは宇宙医学
川口淳一郎
徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直
正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの
田口佳史
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
【入門】日本仏教の名僧・名著~総論(1)名僧の原著に触れる意味
「文は人なり」――原文を読んで名僧の思想の息吹に触れる
賴住光子
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」
台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件
テンミニッツ・アカデミー編集部
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
今井むつみ
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子