世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
譲歩の「レッドライン」…ウクライナ問題が示す教訓
世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機(5)ウクライナの教訓を生かすために
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
緊張感を増す台湾問題において、隣国として重要なポジションにある日本。中国への態度を模索する中、ウクライナの現況からどのような指針が得られるだろうか。武力行使による中国の損失の提示や、譲歩的な姿勢が「弱さ」としてつけ込まれる危険性など、その教訓は多岐にわたる。(全5話中第5話)
時間:10分40秒
収録日:2023年2月28日
追加日:2023年4月26日
≪全文≫

●台湾問題に対する中国への態度はウクライナ問題のロシアより重要


 さて、EUやNATO、あるいは民主主義諸国から、今、ウクライナは結束して支持を受けています。しかし、繰り言かもしれませんが、せめてクリミア半島の占領の直後からドイツやフランスもきちっと反応を出していたら、また今回の様子が違ったのではないかと思うのです。

 これは日本においても、経済諸団体などや、あるいは日本の中国へ進出している企業の腹のうちをもとより読むことは、最終的にできません。しかし、また同時に企業倫理として、彼ら自身がたいへん利益を享受しているところの自由競争、あるいは民主化の原理というものがきちっとしなければそもそも資本主義の成熟と発展というのは原理的にはあり得ないわけです。特に日本をはじめとする、もともと後発的に資本主義を起こした国はそうだったわけです。このあたりがスタンスとして分からないのが、他の日本政府あるいは日本国民の一部ではないかと思うのです。

 私自身がウクライナ有事、あるいはウクライナという離れたところについて語るということは、それはある意味で自分のさまざまな利益や存在の代償を伴うわけではありません。しかし、台湾という、中国が大きく絡んで、そこにおいてはっきりとした態度、あるいは立場というものをそれなりに迫られた場合にどうするのかというと、中国は日本にとってロシアよりある意味ではるかに重要で、はるかに大規模なグローバルサプライチェーンに組み込まれているということもありますので、物事のレベルが違ってくるかもしれません。


●台湾への武力行使が中国にとってマイナスであることを示すべき


 しかし、考えてみた場合、中国にとっても、また日本にとって中国市場が大事なのと同じように、中国にとっても日本という国の持つ技術やサプライチェーン、これはたいへん重要なのであって、そもそも武器というものを大事にし、「唯武器史観」のようなことにおいて戦争を起こすことが、台湾統合ということで正当化されるというものでもありません。

 仮に中国の立場から正当化されるにしても、著しく台湾のインフラストラクチャーを毀損してしまい、半導体メーカー工場までも戦役に入ってきたりします。それはどうするのか。それから技術者やさまざまな企業体を壊すことになった場合、本来、平和裏に中国と統合していくからこそ出てくる...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
中国共産党と人権問題(2)中国共産党は超法規的存在?
国家の上に存在する中国共産党はどのような組織なのか
橋爪大三郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
『孫子』を読む:行軍篇(5)敵の動向と窮寇の見極め
窮寇の見極め―慎重に、真摯に、冷静に敵を観察せよ
田口佳史