世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機
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譲歩の「レッドライン」…ウクライナ問題が示す教訓
世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機(5)ウクライナの教訓を生かすために
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
緊張感を増す台湾問題において、隣国として重要なポジションにある日本。中国への態度を模索する中、ウクライナの現況からどのような指針が得られるだろうか。武力行使による中国の損失の提示や、譲歩的な姿勢が「弱さ」としてつけ込まれる危険性など、その教訓は多岐にわたる。(全5話中第5話)
時間:10分40秒
収録日:2023年2月28日
追加日:2023年4月26日
≪全文≫

●台湾問題に対する中国への態度はウクライナ問題のロシアより重要


 さて、EUやNATO、あるいは民主主義諸国から、今、ウクライナは結束して支持を受けています。しかし、繰り言かもしれませんが、せめてクリミア半島の占領の直後からドイツやフランスもきちっと反応を出していたら、また今回の様子が違ったのではないかと思うのです。

 これは日本においても、経済諸団体などや、あるいは日本の中国へ進出している企業の腹のうちをもとより読むことは、最終的にできません。しかし、また同時に企業倫理として、彼ら自身がたいへん利益を享受しているところの自由競争、あるいは民主化の原理というものがきちっとしなければそもそも資本主義の成熟と発展というのは原理的にはあり得ないわけです。特に日本をはじめとする、もともと後発的に資本主義を起こした国はそうだったわけです。このあたりがスタンスとして分からないのが、他の日本政府あるいは日本国民の一部ではないかと思うのです。

 私自身がウクライナ有事、あるいはウクライナという離れたところについて語るということは、それはある意味で自分のさまざまな利益や存在の代償を伴うわけではありません。しかし、台湾という、中国が大きく絡んで、そこにおいてはっきりとした態度、あるいは立場というものをそれなりに迫られた場合にどうするのかというと、中国は日本にとってロシアよりある意味ではるかに重要で、はるかに大規模なグローバルサプライチェーンに組み込まれているということもありますので、物事のレベルが違ってくるかもしれません。


●台湾への武力行使が中国にとってマイナスであることを示すべき


 しかし、考えてみた場合、中国にとっても、また日本にとって中国市場が大事なのと同じように、中国にとっても日本という国の持つ技術やサプライチェーン、これはたいへん重要なのであって、そもそも武器というものを大事にし、「唯武器史観」のようなことにおいて戦争を起こすことが、台湾統合ということで正当化されるというものでもありません。

 仮に中国の立場から正当化されるにしても、著しく台湾のインフラストラクチャーを毀損してしまい、半導体メーカー工場までも戦役に入ってきたりします。それはどうするのか。それから技術者やさまざまな企業体を壊すことになった場合、本来、平和裏に中国と統合していくからこそ出てくる...

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