世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機
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ザマの戦いに勝利――スキピオの戦略的発想の転換に学ぶ
世界史から見たウクライナ戦争と台湾危機(3)持久戦から決戦へ――戦略的発想の転換
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
現在も続くウクライナ戦争は、このまま持久戦が続けば互いに消耗し、どちらが勝とうとも損失の大きい「ピュロスの勝利」になってしまう。そこで重要になるのは、紛争解決に向けて両者が歩み寄るタイミングだが、それはいつ、どのようにやってくるだろうか。ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領を古代ギリシャ・ローマの人物と重ね合わせ、戦況の転換期を探る。(全5話中第3話)
時間:10分01秒
収録日:2023年2月28日
追加日:2023年4月12日
≪全文≫

●ウクライナがロシアとの和平を結ぶタイミング


 皆さん、こんにちは。第2話は、アネクドート、すなわちコメディアンであったゼレンスキーが一流の政治家になり、そして政治家であったプーチンが三流のコメディアンになったという話で終えたのですが、考えてみますと、このウクライナはまことに信じられないほどの苦境に立たされたわけです。

 ほとんど言いがかり同然、何もその根拠がない、いきなり軍事力で自分の家にズカズカと戦車が入ってきたわけですから、たまったものではありません。誰だってこういうときは大きなショックを受けますが、この信じられないほどの苦境に立ったときに、ゼレンスキーという人は、前任の大統領たちがおそらく果たし得なかったほど、彼らがむしろダメージを与えていた国の危機において、誰が仮にその場所にいても難しい仕事を今ゼレンスキーが進めているということについては、ほとんどの人々が敬意を持って見ているのではないでしょうか。

 ゼレンスキーが問われるのは、そのような、ある意味で一流の政治家として試練をくぐり抜けている彼が、いかなるタイミングで、そしてどのような条件のもとでロシアとの和平を結ぶのか、ということです。これは結ばざるをえないのです。永久革命、100年戦争をやるというようなことは全く不可能なことです。そうすると、どこかで欧米も武器をずっと援助し続けるわけにいきません。あるいは経済支援を続けるわけにもいきません。どこかでゼレンスキーは、ロシアとの間の紛争解決に入ってほしいということになります。このタイミングはどこかということになります。

 粘ること、あるいはとにかく徹底してロシアを打ち負かしていくために持久戦に持ち込んでいくこと、これが自己目的になりますと、アメリカ・ヨーロッパの力も尽きてしまいます。つまり、持久戦をやってロシアにダメージを与えたことで得られていた果実もまた、無駄なことになりかねないわけです。


●持久戦争を打破する決戦への戦略的な転換


 ちょうどローマ史において、ファビウスは執政官(コンスル)を何度も受けて、ローマ人たちをカルタゴとの戦いで勝利させていくためにさまざまな工夫をしていきます。その工夫の大きなものは、持久戦争へ持ち込むということでした。したがって、20世紀の兵学的な思想、日本陸軍の石原莞爾の言葉を考えると、ファビウスが考えているのは...

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