ポスト冷戦の終焉と日本政治
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中国の強大化、台湾問題…緊迫した国際秩序と日本の立場
ポスト冷戦の終焉と日本政治(4)中国の強大化による世界秩序の激変
政治と経済
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
世界の様相がここまで激変した要因の一つは、「中国の強大化」である。中国がここ数年で見せた国内の弾圧や対外膨張に、アメリカ、ヨーロッパを含め、多くの国が懸念を示している。冷戦終焉後、消滅したと思われていたイデオロギー対立は、いまだ世界情勢に大きな影響を及ぼしているのだと中西氏は述べる。そこで今、日本が取るべき立場とは何か。また、今後重視される日本の安全保障の柱とは。(全7話中4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分44秒
収録日:2023年5月24日
追加日:2023年7月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●明確となった「中国の強大化」


―― その多極化、しかも普遍的な価値観に基づく平和共存的な多極化ができるかどうかという点で非常に印象深かったのは、2016年当時に出した『「世界激変」の行方』の段階だと、ちょうどトランプ大統領が登場する時期で、日本にとってもまだ普遍的価値観について「そこにこだわる、あるいはそこに固守して衝突の前面に押し出されてしまう危険性があるのではなかろうか。それよりは、もう少し柳の枝のように柔軟に対応するべきだ」という位置づけだったと思います。それがこの本『偽りの夜明けを超えて』の時になると、いかに普遍的価値観を掲げるかが非常に重要な外交的要素になってくるというお話です。この2016年から今までの間に、世界の様相がそこまで一変した、とわれわれは強く認識したほうがいいということですね。

中西 はい。その通りですね。その一つは何といっても「中国の強大化」と、「中国の暴走」といってもいいでしょう。もはや「中国の台頭」という言葉では当てはまらないほどの強硬な対外膨張、あるいは国内における強圧政治。習近平政権の中国がとうとう、それまで長い間秘めていたいろいろな内外の強硬政策を実行に移し始めた。そして、さらに中国の国力が強大化したということが挙げられます。

 特に2020年が非常に重要な年だったと思います。香港は、厳密な意味で2020年までは、中国国内ではありませんでした。中国領土ではあったけれども、「一国二制度」ということで香港の自由は認められていました。香港の政治体制は、中国本土とは違う民主主義の体制であっても構わないということで、鄧小平以外にイギリスと合意して植民地の返還ということになり、当時までの状況につながったのです。

 ところが、2020年に習近平政権は「国家安全維持法」という香港に特殊な法律を北京でつくってしまった。香港の自由な政治活動を一切認めないということで、(政治活動をした場合は)厳罰に処す。非常に強い国内の弾圧政策を始める。これは、おそらくは価値観の問題です。日本人の多くは26年前、香港が中国に返還されるとき、一国二制度で香港はこれまで通り自由な体制を維持する。少なくとも50年間は香港の自由は保たれると思っていたのが、一挙に、しかも非常に強圧的な形で、一国二制度が否定されてしまったのです。


●中国は現状の国際秩序へ挑戦している


中西 つま...

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