ポスト冷戦の終焉と日本政治
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
プーチンを増長させた責任は日本にも…世界激変の行方は?
ポスト冷戦の終焉と日本政治(3)ウクライナ戦争後の「多極化の世界」
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
「世界激変の行方」ということで、ポスト冷戦の第3期に2014年のクリミア侵略、そして2022年からのウクライナ戦争へとつながるほどプーチンを増長させた要因・責任は西側諸国だけでなく、日本にもあったと中西輝政氏は言う。なぜ日本はロシアの侵略主義を加速させた一因になってしまったのか。また、ウクライナ戦争の帰趨によって世界はどのように多極化していくのか。ポスト冷戦の30年が終わり、本当の意味での「夜明けの時代」を迎える上で、見誤ってはならないポイントを解説する。(全7話中4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:7分56秒
収録日:2023年5月24日
追加日:2023年7月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●プーチンを増長させた責任は日本にもある


中西 「世界激変の行方」ということでいえば、2016年にトランプ大統領が登場して選挙で勝利し、イギリスは国民投票でEU離脱を決めました。

 それから、その2年前の2014年、プーチン・ロシアがウクライナ(領)のクリミアを侵略しました。第一次ウクライナ戦争といってもいいでしょう。これが悲劇的だったのは、西側の国が、プーチンのクリミア侵略を、実質的に見て見ぬふりをしたこと。欧米諸国は名ばかりの対ロ制裁をして、そしてウクライナとロシアとの和解を行うとしました。メルケル政権のドイツがその代表だったわけですが、こんなことをすれば、西側は(ロシアが)ウクライナ全土を侵略しても「仲直りしてくださいよ」程度で終わるのかな、とプーチンに思わせたのです。今日につながる非常に大きな悲劇の始まりが、2014年から2015年の「ミンスク合意」などというとんでもない合意を西側が結ばせたことですが、ウクライナはここで非常に大きな譲歩を強いられてしまった。

 またプーチンが増長したのは、日本にも責任がありました。当時、日露国交正常化交渉ということで、安倍政権の日本は、このプーチン政権に非常に接近して、あたかも北方領土が今すぐにでも返ってきそうな世論を作り出しました。あのような交渉を行えば、プーチンはすでに外国の領土(クリミア)を奪っているので日本に領土を返すわけがないのに、なぜか日本政府はそういった幻想の中でプーチン政権に対する融和政策、かつてのヒトラーに対してイギリスが取った融和政策に似たような意味をもつ日ソ交渉を行ってしまったのです。

 これは「悔いを千載に残す」ことにならなければいいと思います。なんといっても当時、日本は「2島返還でいいですよ」といったシグナルをロシアに出してしまっているわけです。これは、プーチンを増長させたといいますか、ロシアの侵略主義を一層(加速させました)。

 私は、残念ながら日本にも、ウクライナ戦争につながる一つの責任がある。欧米諸国にも責任があると思います。

 ただし比較にはなりませんが、この戦争の侵略の大部分、ほとんど全ての責任は本来、プーチンのロシアにあることは大前提として申し上げています。そのことは是非、誤解のないようにお願いしたいと思います。


●ウクライナ戦争後の見取り図を描くときを迎えている


中西 そういう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新