●日本は台湾の平和的統一を果たしたい中国との対話を絶やしてはならない
―― 質問が皆さんから来ておりますので、これからそちらを読み上げさせていただきたいと思います。
まず第1問目でございます。「台湾と中国が戦争になれば、当然アメリカも黙っておらず、まずは経済制裁ということから始まると思うのですが、悪い方向に行けば日本はアメリカに追随して、徴兵制などになって戦争に巻き込まれてゆくのでしょうか」と。
これは今日の話でいうと、それこそ日本の米軍基地が攻撃されるなどということになると、必然的に巻き込まれるということになるわけですね。
小原 はい。ですので、絶対そうなってはいけないわけです。そうなったらどうしようということももちろん考えないといけないとは思いますが、まずはそうならないようにしないといけません。そのために何ができるかということで、先ほども言いましたけど、とにかく対話を絶やしては絶対いけないということです。
僕が見るところでは、少なくとも中国も武力統一はしたくありません。なんとか平和的にやりたいのです。香港であれだけうまくいっていなくて、事実上形骸化しているにもかかわらず、「一国二制度」という看板を掲げています。やはり平和統一の裏側には「一国二制度」しかないわけです。なので、これを掲げることによって中国としても正義というものを世界に見せているわけです。
つまりアメリカと一緒になって、中国に対して圧力をかけてきているという認識ではありません。ひょっとしたら中国側に取り込まれるかもしれないという国に対して、やはりそれなりの自分たちの正統性を見せていく。武力でもって相手をたたいて自分の目的を達するということではなく、中国はとにかく話し合いで、平和的にやっているのだということを見せてきているのです。同時に軍事的な威嚇、威圧を強めながらも、その点をきちっと残しているという部分に対しては、われわれとしてはむしろ外交においてしっかり焦点を当てて、アメリカと一緒になって中国と話をしていかないといけません。まずそこが最大のポイントです。
同時に、抑止力と先ほどから言っていますが、戦争にしないための抑止力は必要で、武力でもって何か目的を達しようとしてもそれは達せられないのだ、という意味での抑止力というものを日本が持っていくことは大事です。まさに日米同盟がどう機能していくのかということです。これはいろいろな有事を考えていかないといけないですし、経済的にも今は苦しいですし、国民の理解を得ることが一番大事ですが、その中でできる日本自身の防衛力の強化はやっていかないといけません。それは抑止力を強めるということです。戦争をするための軍事力ではなくて、この地域の安定を守っていくための、パワーバランスが変わっていく中でパワーバランスを維持していくための軍事力、防衛力の強化ということです。こういったことを先にしっかり考えて、手を打っていく必要があると思います。
●台湾世論の現状維持志向と習近平氏の思惑の乖離
―― 一朝一夕にパワーバランスは整えられるものではないですから、これは本当に準備をしていかないといけないということになるでしょうし、今のお話でいうと、台湾の方々がどう思うのかということも非常に重要な気がします。今の香港や、世界から批判されるような中国の姿を見て、統一を望むのかどうかというところも、かなり大きな問題になりますよね。
片や、ロシアのプーチン氏なども、よくアメリカの大統領選挙に介入した、しないといった話をされましたけれども、今度の2024年の台湾の総統選挙に向けて、何かの介入みたいことがあるかもしれないといった、いろいろな要素を見ていかないといけないということですね。これについてはどのように見ておられますか。
小原 台湾の人たちがどう考えるかということについては、これまでも世論調査がたくさんやられています。その結果明らかなのは、われわれは台湾人であるという台湾人意識が非常に強まっているということです。それは、「台湾独立」ではない現状維持の意識です。蔡英文氏からすれば事実上独立しているのだということなのですが、要するに、台湾自身が独立するぞという独立宣言をするということではなく、事実上今の状態を守っていくという現状維持です。そのことがやはり台湾人意識と裏表になって、いろいろな世論調査に反映されているわけなので、それを中国側がどう解釈するかです。つまり現状維持ということで、ずっと統一を引き延ばしていくということになってくると、習近平氏がこれまでも言っているように、これはダメだということになります。いつまでも先延ばしはできませんよということを彼は言っているわけです。
ですから、「現状維持」という台湾人の願いと、一...