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逆流する「党政分離」…習近平政権が及ぼす悪影響

2024年危機~米中関係の行方(4)習近平の一強体制と中国の外交

小原雅博
東京大学名誉教授
情報・テキスト
中国との地道な対話が日本にとっても重要であることをこれまで確認してきた。その中国は、現在どのような外交的課題を抱えているのか。また、鄧小平氏以降の「改革開放」路線は、習近平政権の一党支配的な政治においてどのように引き継がれようとしているのか。外交、経済の両面から、習近平政権の問題点を解説する。(全5話中第4話:2022年9月6日開催ウェビナー〈2024年危機…米中関係の行方〉より)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:06:13
収録日:2022/09/06
追加日:2022/12/23
ジャンル:
≪全文≫

●習近平政権の一強体制が外交を難しくしている


―― 次の質問にまいりたいと思います。「今までのゼロコロナ政策と李克強首相ら、共青団派(中国共産主義青年団派)の対外協調体制はどのようになるのでしょうか」ということです。今度は李克強氏の話です。

小原 習近平氏の一強体制が強まっていく流れの中で、実はその一強体制というものが対外的な関係を非常に難しくしてきたということがあるわけです。周辺国外交もそうですが、特にアメリカとの関係が難しくなってきているのです。つまり、中国の外交自体が、それほど彼らが望むような形で発展をしてきていないのです。

 もちろん、ロシアとの関係やアフリカのような途上国、国連との関係もあります。今回のウクライナの戦争を見ても分かるように、アメリカと態度を一にしないような国がはっきりあるわけです。そういった中で、もちろん中国の外交が全て、彼らが望むような結果になっていないということではないのですが、少なくともアメリカとの関係や、日本を含めた周辺国との関係が悪化しているということです。これは国内でもいろいろな意見があります。


●経済にも介入する習近平政権の「集権化」の動向を注視せよ


小原 そうした外交面の問題と、もう1つ、改革開放をどういう形で続けていくのかということについて、習近平氏の政治の中で共産党の一党支配、つまり共産党の指導を強めていくのだという流れが非常に強くなってきたわけです。「社会主義市場経済」とよくいうのですが、社会主義と市場経済を1つにしたカモノハシのようなものです。

 この社会主義というものは何かというと、共産党一党支配なのです。市場というものは、アダム・スミスにいわせれば「神の見えざる手」です。これでもって需要と供給が一致して、価格が決まることで、市場があるべき姿に収まるのです。しかし、そこに実は見えざる神の手ではなくて、共産党の指導の手が入っていき、東西南北の全てを中国共産党が指導するのだという話になってくると、われわれから見たら、それは望ましい改革開放ではないのです。

 「党政分離」という言葉があります。つまり党と政治、国家の行政を分離していくということです。党が何でもやるのではなくて、なるべく分離していこう。市場経済化も、なるべく市場に任せよう。これが、鄧小平氏の改革からの流れなのですが、どうも習近平氏の時にそれが逆流しているようなところがあるのです。そういう状況が、企業のインセンティブ、つまりアントレプレナーシップ(起業家精神)であるとか、あるいはイノベーションにも悪影響を与えるのではないかという議論があるわけです。

 ですので、われわれが見ていかないといけないのは、習近平政権の下での政治が「放」ではなく「収」の方に動くのかどうかです(※編注:「放」は中国語で分権化を意味し、「収」は中国語で集権化を意味すること)。中国の共産党は集権化していくのか、それとも分権化していくのかと、今までもずいぶん議論があったわけです。経済もそうですし、地方の政治もそうなのです。集権化が進んでいけばいくほど、本来あるべき「改革開放」とは少し違った方向にいっているのではないかという部分を、今後見ていかないといけないのではないでしょうか。アメリカを抜いて世界一の大国になるのだということを占う上でも、それが今後の中国の非常に大事な問題だと思います。

 そうした問題について、今、中国の中でものすごく議論があるわけです。よくいわれるのが「新左派」ですが、中国では改革開放を支持するのは「右派」といわれます。この右派と新左派の対立がまた非常に激しくなってきているということがよくいわれます。これにナショナリズムが絡んできていて、ナショナリズムを帯びた新左派のような、イデオロギー的な声も非常に強まっています。これが、われわれが中国との関係、あるいは中国の将来を見ていく上で注意しないといけない点だと思います。
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