●習近平政権の一強体制が外交を難しくしている
―― 次の質問にまいりたいと思います。「今までのゼロコロナ政策と李克強首相ら、共青団派(中国共産主義青年団派)の対外協調体制はどのようになるのでしょうか」ということです。今度は李克強氏の話です。
小原 習近平氏の一強体制が強まっていく流れの中で、実はその一強体制というものが対外的な関係を非常に難しくしてきたということがあるわけです。周辺国外交もそうですが、特にアメリカとの関係が難しくなってきているのです。つまり、中国の外交自体が、それほど彼らが望むような形で発展をしてきていないのです。
もちろん、ロシアとの関係やアフリカのような途上国、国連との関係もあります。今回のウクライナの戦争を見ても分かるように、アメリカと態度を一にしないような国がはっきりあるわけです。そういった中で、もちろん中国の外交が全て、彼らが望むような結果になっていないということではないのですが、少なくともアメリカとの関係や、日本を含めた周辺国との関係が悪化しているということです。これは国内でもいろいろな意見があります。
●経済にも介入する習近平政権の「集権化」の動向を注視せよ
小原 そうした外交面の問題と、もう1つ、改革開放をどういう形で続けていくのかということについて、習近平氏の政治の中で共産党の一党支配、つまり共産党の指導を強めていくのだという流れが非常に強くなってきたわけです。「社会主義市場経済」とよくいうのですが、社会主義と市場経済を1つにしたカモノハシのようなものです。
この社会主義というものは何かというと、共産党一党支配なのです。市場というものは、アダム・スミスにいわせれば「神の見えざる手」です。これでもって需要と供給が一致して、価格が決まることで、市場があるべき姿に収まるのです。しかし、そこに実は見えざる神の手ではなくて、共産党の指導の手が入っていき、東西南北の全てを中国共産党が指導するのだという話になってくると、われわれから見たら、それは望ましい改革開放ではないのです。
「党政分離」という言葉があります。つまり党と政治、国家の行政を分離していくということです。党が何でもやるのではなくて、なるべく分離していこう。市場経済化も、なるべく市場に任せよう。これが、鄧小平氏の改革からの流れなのですが、どうも習近平氏の時に...