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1000兆円規模の可能性?台湾有事の日本への影響は甚大

台湾有事を考える(8)日本への影響と国際社会の支援

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
情報・テキスト
台湾有事による日本への影響はどれくらいになるのだろうか。サイバー攻撃による社会経済システムの機能不全、原発へのミサイル攻撃など想定される可能性を踏まえて考えると、損害はGDPの数年分になるのではないかという予測もある。もしそうなった場合、ようやく防衛力の強化に手をつけ始めた日本では、中国の軍事行為に対抗できないだろう。今回はその果てに待ち受けている恐ろしい現実について考える。(全9話中第8話)
時間:12:59
収録日:2022/12/19
追加日:2023/02/27
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≪全文≫

●サイバー攻撃、原発攻撃などにより日本への影響は甚大


 こうした(前回お話した武力侵攻シミュレーションによる)有事はどのような影響を日本にもたらしたのか。いくつかまとめてみたいと思います。

 1つは、サイバー攻撃で社会経済システム機能を不全に陥らせたということです。これは前に詳しく言いましたが、行政、経済、産業、国民生活を事実上停止させるわけです。このシステムがどのようにして壊れたのか、発見して、確認して、機能を復旧させるには、多大な時間と費用がかかるわけです。

 その間、経済活動は停止し、また低下していますので、大変な経済的損害が出てきます。GDPの数割に及ぶ可能性があります。参考に考えると、2020年の4-6月期のGDPは、新型コロナウイルスによる行動抑制だけで32パーセントもマイナスになりました。これよりおそらく何倍も被害を受けるだろうということで、これは積算してみる必要があります。

 それから、ドローンとか無人機の攻撃による基幹インフラの破壊か、あるいはその機能の停止です。一番目立ち、焦点になりそうなものは原子力発電所です。この図を見ていただきますと、日本には海岸にこれだけの原子力発電所があるわけです。原発を格納している建物がありますが、周囲は非常に分厚く何重にもなっています。底は厚いですが、頭部は薄いのです。たぶん一、二重にしかなっていません。

 ですから、これを無人機の大型ドローンで攻撃するとすぐ破壊され、原発は停止します。もし、まかり間違って爆発すると何が起こるかというと、核爆発反応を起こしてしまうので、大規模な放射能災害に発展する恐れがあります。攻撃側から見れば、これほど簡単に大損害を与えることができるので、おそらくその段階になると徹底的にドローンや無人機で攻撃するはずです。しかも、日本海側に稼働中のものが多く、一番攻撃しやすいわけです。

 さらに新幹線や鉄道、基幹道路なども物理的に破壊します。水道システムも簡単に破壊できます。おそらく毒物を投入するでしょう。そうすると、その下流の人たちは何百万人も中毒で大変なことになります。データセンターが破壊され、海底ケーブルも切断されます。

 次に重大なことは、日本の戦力がかなり無力化してしまうことです。自衛隊基地への徹底攻撃です。これはほとんどミサイルですが、極超音速変則軌道ミサイルというものが多く、日本の今の迎撃態勢ではほとんど撃ち落とせません。それから先ほど申し上げたように、台湾周辺でシーレーンが遮断されると、基礎物資が日本に搬入できなくなり、日本はだんだん窮乏化していくということです。


●日本の損害は1000兆円規模か、経済破綻に直面する可能性も


 それで総合的損害はどのくらいになるかですが、サイバー攻撃によるグレーゾーン段階で、日本の経済、社会、政府の基幹システムが機能不全となるので膨大です。先ほど2020年の4-6月期におけるコロナ禍の時のGDP減少分が32パーセントと言いましたが、実額では170兆円ぐらいです。

 ただ、その後にドローンや無人機、ミサイル攻撃で物理的な破壊が起こりますから、これを合わせてトータルシステムの機能不全が起こります。経済社会は多くのシステムが総合されて動いているわけで、部分システムが互いに連関し合っていますから、これが相互にマイナスの相乗効果で複合作用が起こると、損害はGDPの1年分、あるいは2年分、あるいは数年分、おそらく1000兆円ぐらいの損害になるのではないかと思われます。

 日本は先進国だからそういうことが起こるわけですが、このことをわれわれは念頭に置いておいたほうがいい。何か不十分であるためにこのようなことに対応できていないと、とんでもない被害が出る可能性があるのです。

 では、日本が反撃できるかということになりますが、攻撃を受けた後での反撃はほとんど不可能です。それからグレーゾーンで反撃するとしても、相手が誰か分からないのでなかなか難しく、北朝鮮とかロシアが参戦してきて陽動作戦を起こすと、こちら側の兵力が分散してしまうので、それも非常に難しい。

 反撃能力については、先ほども詳しくいろいろなことを述べました。新しい安全保障戦略でどのようにするかを申し上げましたが、2023年の段階ではほとんど間に合いません。2030年以降に台湾有事があれば、日本も多少反撃する能力を持っていますから、ある種の実際的な戦争になるかもしれませんが、そのようなときには中国はやらないと思います。つまり、これは抑止力が効いているということですから、抑止力を高めるということは非常に重要です。

 一番いいのは(戦力を)使わないで抑止力を強化することで、今回の新しい安全保障戦略の取り組みは、私は正論だと思います。ただちょっと残念なこ...
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