●日本にとって北朝鮮の脅威とは何か
―― 皆様、こんにちは。
小原 こんにちは。
―― 本日は東京大学大学院法学政治学研究科教授でいらっしゃる、小原雅博先生にお越しいただきまして、「北朝鮮の脅威と日本の国益」というテーマでお話を頂ければと思っております。
北朝鮮は、まさに今、と言うかずっとここ何十年にわたり、厳しい脅威であり続けています。しかし端的に現在、日本にとって北朝鮮の脅威とは何かとお聞きした場合に、どのような状況だと思われますか。
小原 安倍政権は2013年に、国家安全保障戦略というものを作りました。その中で、日本の国益は3つあるとしました。その中で最も重要なのが、日本の国家・国民の生存と安全なんですね。この生存と安全という国益に対する最大の脅威は何かというと、いろいろな議論があるのですが、確実に間違いなく、北朝鮮の核・ミサイルの開発がそのリストの1番か2番に出てくるのではないかと思います。これはコンセンサスの問題だと思います。
具体的にいうと、いわゆるノドンミサイルです。これは日本全域を射程に収めているわけですが、これに核を搭載して、日本を攻撃するというシナリオが現実のものとなったとすると、どうなるでしょうか。
日本はもちろん、日米同盟があり、核の傘があります。そして日本自身も、弾道ミサイル防衛システムを強化していますから、この攻撃に対しても、いわゆる抑止力での防衛を当然行うでしょう。しかし、専門の方が言うのは、北朝鮮は200発から300発ぐらい、ノドンを持っているだろうということです。そのため、例えば連射で何発も続けざまに撃ち込まれた場合、日本は本当に全部撃ち落とせるのかといえば、そこはなかなか厳しい状況になるんじゃないかと思います。
それからよく、「デコイ」という言葉が使われます。ミサイルに何が積まれているかというのが分からないわけです。核が積まれているのか、積まれていないのか。あるいは、そこには化学兵器も積むことができます。また、何も積んでいないことがあるかもしれない。この「デコイ」というのは、まさに囮のことです。こういうものをたくさん日本にやってきたり、あるいは撃ち込まれたときにどうなるか。防衛面の方がやはり脆弱で、圧倒的に攻撃優位です。
ですから、やはり日本にとって、国際社会が今、国連や米朝交渉といったプロセスで北朝鮮に完全...