●韓国では保守派と左派の対立がある
―― そういう環境の中で、今後日本がどうしていくかという議論に移っていきたいです。世界的な見地から見て、まず韓国の話をして、日本が今後どうするかという話をしましょう。
今、日韓関係は摩擦が相当多くなってきています。日本の論者の中には、いまの文在寅政権が親北といいますか、北朝鮮融和派であって、北朝鮮との統一といいますか、朝鮮統一国家というようなものを目指しているからあのような行動をとっているのだという見方があります。つまり現政権は北朝鮮派なんだというようなことを言う人もいます。
その割に、現時点で北朝鮮が韓国に対して送っているメッセージは、かなり塩対応というか、「お前は国際的にも信用されていない」とか、「北朝鮮は相手にしない」とかですね、かなり突き放したような対応をしているところがあります。なんとなく日本の立場から見ていると、この構図はどう理解していいかというのが分からないところがあるんです。先生はこれをどのようにご覧になりますか。
小原 私は韓国の専門家ではないんですが、韓国には時々行きます。やはりそこで感じるのは、韓国も一枚岩ではないということです。いわゆる保守派と左派の対立軸というのはずっと続いてきているわけです。今の政権というのはそういう意味でいうと、左派政権ですね。金大中さんの太陽政策もそうでしたが、やはり文在寅政権は、統一や南北の対話、南北の融和を求めています。それを重視して、優先的に政策を立て、外交を進めているという政権です。
これはメディアの世界でも同様です。やはりメディアも、保守系のメディアと、特に新聞のような左派のメディアでは、ずいぶん違います。例えば今回の日韓関係などでも、状況が悪化する中で、韓国の世論が反日一色だといわれたりもします。確かに保守系の新聞の中には、自国政府に対して批判的な社説を載せるところもあるからです。
私が以前見た社説で面白かったのは、朝鮮日報で日本というのは世界でルールを最もよく守る国だと書かれていたことです。今回は、徴用工をめぐって問題が起きています。しかし、これについては請求権協定というものを韓国の政府は結びました。この社説からすれば、この約束を韓国が守るべきなんじゃないかと主張しているのです。
●徴用工問題への対処には韓国国内での批判もある
小原 これまでの韓国政府は、この協定をずっと守ってきていました。しかし昨年、韓国最高裁の判決が出てしまったことで、今のような状況になってしまいました。実はそれ以前は、裁判所はずっと棄却してきたのです。そういう意味でいうと、文在寅さんはこの判決には三権分立だから口出しできないと言っているのですが、請求権協定は国家全体として作った国際約束ですから、これは守るべきじゃないかという報道も実はあったのです。
もちろん、その後のいろんな経緯もあって、なかなかそうした声も出づらくなっているところがあるんだと思います。そうした中で僕が感じるのは、例えば政権が代わったら、また違ってくるだろうということです。例えば、北朝鮮の脅威がもっと高まってくれば、また違ってくるでしょう。今は韓国と北朝鮮が対話ムードの中で、日本に対する経済的な重みは相対敵に下がっているわけです。今や韓国の最大の貿易パートナーは中国ですから。
こうしたいろいろな要素が加わって、どうも今の韓国の日本に対する非常に強硬的な態度につながっている部分があると思います。しかし、こうした状況が全てではないですし、外部の状況が変わることによっても、変化は出てくると思います。
●韓国と北朝鮮の微妙な関係
―― かたや、北朝鮮の対応です。北朝鮮としては、うまく交渉を運ぶために、韓国に対して塩対応というか、冷たい対応をしています。ある意味で陽動工作のような、そういうふりをしておいて、何か別の思惑を動かしているのでしょうか。それとも、完全に韓国を突き放しにきているのでしょうか。これをどう見るかというところもあるかと思うんです。
小原 2018年からの対話に至るプロセスを見ていても分かるように、北朝鮮は平昌オリンピックを利用しました。さらに、現韓国政権が左派政権だというようなこともあります。そうした中で金正恩委員長が考えているのは、日韓関係が今のように対立し、悪化している状況を利用しようというものです。
●北朝鮮は韓国に対して経済協力についての圧力をかけている
―― あるいはデカップリングに成功しているわけですよね。
小原 そうですね。これを利用して、韓国に対してもっと自分たちを受け入れさせるような態度を取るんじゃないかと見ている人もいると思います。しかし、その反対もあると思うんですね。逆にもっと相手に強くプレッシャーをかけて、もっと...