北朝鮮の脅威と日本の国益
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「朝鮮半島の非核化」とは北朝鮮のことだけではない
北朝鮮の脅威と日本の国益(2)朝鮮半島の非核化
小原雅博(東京大学名誉教授)
目指すべきなのは「朝鮮半島の非核化」だが、この言葉はよく吟味する必要がある。まず、北朝鮮だけでなく在韓米軍が有する核もまた、一挙に廃棄しなければならない。さらに、非核化といった際には、核爆弾だけでなく開発プログラムや技術もすべて廃棄しなければならない。(全9話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:6分43秒
収録日:2019年8月21日
追加日:2019年10月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●「非核化」とは北朝鮮だけではなく、朝鮮半島全部にすべきではないか


―― そうしたら、ここで議論の整理のために、前回先生がおっしゃった、「朝鮮半島の非核化」といった場合、どういうイメージになるかということでお聞きしたいと思うんですけれども。

小原 皆さん、「北朝鮮の非核化」とよく言うんですけれども。

―― そうですね。「北朝鮮が(核兵器を)なくすんだ」というイメージですが。

小原 まさにそういうことではあるんですけれども、北朝鮮からすると、要するに韓国にも核兵器はあるんじゃないか、と。

―― それは「米軍の」ということですね。

小原 ええ。あるいは、持ち込まれるんじゃないかという、こういった不信感がものすごく強いんですね。実際に2017年には、大変な、最大限の圧力というようなことで、原子力空母だとか、原子力潜水艦だとか、まさに核爆弾を搭載できるような戦略爆撃機だとかが、朝鮮半島周辺に大挙しました。こういった核による威嚇というものをもなくすべきじゃないかというのが、「非核化」という言葉には込められています。北朝鮮だけの非核化じゃなくて、朝鮮半島全部の非核化にすべきじゃないかということです。

―― 北朝鮮も中国も、ある意味、イメージしているのはそのような非核化だということですね。

小原 そうですね。実際、「朝鮮半島の」という形容詞というか、限定句は、「北朝鮮」ではありません。実は2005年の6者会合の共同声明の中でもそういう言葉が使われてきているんですね。シンガポールで米朝首脳会談が行われた時も「朝鮮半島の」という表現が使われました。われわれは、ついつい「北朝鮮の非核化」をイメージしてしまいますが、実は「朝鮮半島の」というのが今のオフィシャルな言い方なわけです。

 その中で実は、1991年に当時のブッシュ政権(お父さんのブッシュ政権のこと)が、韓国にある在韓米軍が持っていた核兵器を撤去しているんですね。これは、朝鮮半島から核をなくすために、イニシアティブをアメリカが取って、北朝鮮に核を保有することをやめさせようとした試みでした。そういう意味で、アメリカからすれば「持っていませんよ」ということなのですが、北朝鮮からすれば、それはなかなか信用できないし、いつでも持ち込めるんじゃないか、ということですね。

 それから、アメリカは「戦略核」を世界中に撃ち込めますから、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男
概説・縄文時代~その最新常識(2)縄文時代の開始時期に関する三つの説
縄文時代の始まりはいつから?…三つの説の特徴とは
山田康弘