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トランプ政権によって崩れ去った核軍縮の歴史的な歩み

2020世界の政治経済と日本(3)揺らぐ世界の安全保障体制

島田晴雄
東京都公立大学法人理事長/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
トランプ政権は安全保障政策に関しても、新たな方針を打ち出している。冷戦時代に締結されたINF条約以降、核軍縮の枠組みは少しずつ発展してきていたが、トランプ大統領はロシアや中国の動きを警戒して、この条約から離脱してしまった。北朝鮮の金正恩委員長と会談を行い、核兵器開発に関して釘を刺したように見えたが、北朝鮮はその後も日本を射程に収めるミサイルの実験を何度も行っている。(2020年1月23日開催島田塾会長講演「2020世界の政治経済と日本」より第3話)
時間:06:33
収録日:2020/01/23
追加日:2020/04/19
ジャンル:
≪全文≫
●核軍縮の歴史的な歩みはトランプ政権のもとで崩れ去ってしまった

 トランプ大統領は非常に危険な政策を取っていますが、もう一つの例はINF条約(中距離核戦力全廃条約)です。INFはIntermediate-range Nuclear Forceの頭文字で、中距離核兵器、つまり核弾頭を持った中距離ミサイルのことを指します。これの廃棄を定めた条約をロナルド・レーガン元大統領とミハイル・ゴルバチョフ元書記長が、さまざまな曲折を経て、これが良いと合意しました。そうしないと世界はひどいことになるといって、INF条約を結んだのです。

 これを結んだのは1987年と30年以上前のことになりますが、その2年後にベルリンの壁が崩壊し、両ドイツが統一されて、1991年にはソ連が解体し冷戦終結と激動が続きました。そのあと、これを踏まえて、START-1、第一次戦略兵器削減条約、さらにはSTART-2という枠組みへと波及して、世界の核軍縮が軌道に乗りました。しかし、トランプ大統領は、この条約を破棄するといい出しました。ロシアがミサイルを開発しているらしいし、中国はこの条約に加盟していないから、こんな条約はなくした方が良いといって、結局廃棄することになりました。これにはヨーロッパは、愕然としてしまいました。こういった背景によって、現在のヨーロッパのアメリカに対する不信は、非常に大きくなってきています。

 北朝鮮は、こうしたてん末を見ていました。そして、トランプ大統領は核廃棄や、軍縮に対して、本気でやる気はないと判断しました。だから足元を見ています。(核廃棄に対して)金正恩氏はもう全くやる気はないででしょう。とんでもない状況をトランプ大統領はつくってしまいました。トランプ大統領は歴史を核軍縮の前の時代に引き戻してしまったのです。


●北朝鮮との非核化を巡る首脳会談は政治ショーにすぎない

 その北朝鮮は、1990年代の末ごろから、急速にミサイル開発を進めました。皆さんも覚えていると思いますが、2017年には射程1万3000キロでアメリカの東海岸に届くといわれる火星15型大陸間弾道弾の発射実験に成功しています。

 北朝鮮と韓国は1953年に休戦協定を結んだものの、まだ平和条約を結んでいないため、未だ戦争状態にあります。そのような不安定な状態の中で、キム王朝の体制を安定化するために、北朝鮮は事実上の核保有国であるという事実をアメリカに認めさせることが悲願なのです。こうした動きを見て、「All options are on the table(軍事制圧も辞さない)」、「ロケットマンだ」などと、トランプ大統領は口汚く罵りました。このようにいいながら、2018年6月にシンガポールで首脳会談を行いました。これも全プロセスを世界中にテレビやネットで放映した、派手な演出でした。

 そして共同声明を出しました。要点は2つあります。一つは、トランプ大統領は北朝鮮に安全の保障を与えると約束してしまいました。つまり、私に会ったのだから、北朝鮮の体制を認めるということです。これは、北朝鮮が最も欲していた内容でしょう。2つ目に、今後の非核化過程に関してですが、こういう文章が出されました。「キム委員長とは、朝鮮半島の完全非核化への確固たる、ゆるぎない約束を再確認した」。これは、単なる口約束なのです。結局、何の歯止めもないのです。

 後日、ハノイで第二回会談がありました。最初は友好ムードで、「I fell in love with him」などといっていましたが、トランプ大統領は北朝鮮の非核化の手掛かりを得たいわけです。トランプ大統領の後ろには、ボルトン氏などの強硬派がいるので、釘を刺しておきたかったのです。

 キム委員長は経済制裁の解除を望んでいました。北朝鮮はマイナス成長だったので、制裁は苦しかったのです。キム委員長は、ヨンビョン(寧辺)という一部の核施設を廃棄する見返りに、経済制裁の全面解除を求めました。おそらく交渉できると思ったのでしょう。しかし、アメリカは全面非核化を求め、その見返りに経済制裁の解除を設定しました。このように二人で対立したのですが、昼食を食べて、記者発表だと思ったら、突然トランプ大統領は席を立ちました。キム委員長も表情をゆがめながら立ちました。後ろで内容に不満を持ったボルトン氏が糸を引いていたといわれています。その後、会談も決裂したわけです。

 キム委員長は、列車に乗って、2日間かけて、また北朝鮮に帰りました。すると、2019年の6月29日に、トランプ大統領はツイッターで、キム委員長に、板門店の非武装地帯で会おうと提案しました。キム委員長も喜んで、二人で会いました。目的は何かというと、一大政治ライブショーです。世界中で、「おお、やった」と大反響を呼びました。アメリカの大統領として初めて北朝鮮の国境を越えていますから、それがやりたかったのでしょう。


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