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北朝鮮の核ミサイルが実装段階に入るのは時間の問題

2018年激動の世界と日本(12)北朝鮮の核問題

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
2017年11月、北朝鮮は火星15型弾道ミサイルを発射した。アメリカの東海岸全域を射程に収めるミサイルだ。核ミサイルが実装段階に入るのはもはや時間の問題である。公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄が、北朝鮮の核ミサイル開発の歴史的経緯について解説する。(2018年1月16日開催島田塾会長講演「激動の世界と日本」より、全14話中第12話)
時間:08:10
収録日:2018/01/16
追加日:2018/04/22
カテゴリー:
≪全文≫

●北朝鮮が核戦力を実戦配備するのは時間の問題だ


 北朝鮮は2017年11月29日、火星15型弾道ミサイルを発射しました。このミサイルはロフテッド軌道を描くもので、ほとんど垂直に近い角度で打ち上げられています。新潟県の人が火の玉を2つ見たそうですが、大気圏に入る時に燃え尽きたのでしょう。7,000度ほどの熱になります。通常軌道で発射されると、その射程は1万3,000キロメートルに及ぶようで、北朝鮮からアメリカの東海岸全域が狙えるということを意味します。

 金正恩氏は、これをもって核戦力は完成したと宣言しました。ただし、まだ実戦配備の段階ではありません。そのためには、さらに3つの条件をクリアーしなければなりません。

 第1に、大気圏に再落下しても燃え尽きないような技術が必要です。10度の角度で大気圏に再突入する際に、燃えてしまっては意味がありません。第2に、精密誘導技術です。ロケットの中に誘導機が入っているのですが、さらに地中を囲むネットによってロケットを誘導しなければ、目的地に当たりません。例えばアメリカは、非常に精密な技術を持っています。1万3,000キロメートル離れたところを狙っても、80メートル以内の誤差です。第3に、弾頭をちゃんと爆発させるような技術も必要です。弾頭は結構厄介で、落ちても爆発しない場合があるからです。

 主要な核保有国は、これの3つをすべて兼ね備えています。北朝鮮が実戦配備にいたるまでにはまだしばらくかかりそうですが、しかし時間の問題です。早ければ半年以内に技術が完成する可能性もあります。

 北朝鮮は核保有国を目指しています。核保有国は、核の脅威を背景にして発言できる力を持ちます。北朝鮮がこうした能力を持てば、1撃でアメリカの心臓部を攻撃できます。子犬でも大きな熊に致命傷を与えられるわけです。そうするとさすがにアメリカも困りますから、北朝鮮が核保有国になる前に、何とかそれを阻止しなければいけません。タイムリミットが2018年の夏なのか年末なのかは分かりませんが、いずれにせよ刻々とその時は迫っています。


●文大統領は大変危険な人物だ


 気になるのは韓国の文在寅大統領の動きです。彼が平身低頭して北朝鮮に接しているため、事態は北朝鮮ペースで進んでいます。平昌冬季五輪に金正恩氏を招待しようとしたかと思えば、今度は北朝鮮の音楽団を呼ぶと言っています。北朝鮮の思うつぼです。まさか平和の祭典の最中に、アメリカも半島を攻撃できないでしょう。

 アメリカが簡単に北朝鮮に手を出せないようにしようと、文大統領が工作しています。彼の主義信条は、北朝鮮と仲良くし、日本は骨の髄から敵視するということです。これは盧泰愚元大統領からのDNAでしょう。

 北朝鮮の核問題は、北朝鮮だけの問題ではありません。北朝鮮に核保有を認めれば、世界に核が拡散してしまいかねないのです。北朝鮮がいいなら、イランだってサウジアラビアだっていいじゃないか、となりかねません。どこかで歯止めをかけなければならないのです。


●火星14型はアメリカのほぼ全域を射程に収める


 もともと北朝鮮は、初代の金日成時代に核を持ちたがっていました。しかし当時は、極めて貧しい国でしたから不可能です。ところが、ソ連が崩壊して風向きが変わります。ソ連とウクライナの技術者は世界中に職を求めて散ったのですが、その技術者をたくさん雇って、核開発を始めたのです。

 それまでは、アメリカの力で北朝鮮を核不拡散条約に加盟させていたのですが、北朝鮮が力をつけてきて、条約から脱退してしまいます。当時開発されていたのは、スカッドやノドン、テポドン、ムスダンです。ノドンやテポドンは、日本を完全に射程距離に収めています。さらに2017年5月、事態は悪化します。スカッドの後継ミサイルが開発され、そこにはかなり精密な操縦誘導システムが装備されました。数百キロの距離で、誤差はたった7メートルしか生じないのです。

 その後、もっと画期的な北極星1型が開発されています。これは潜水艦から発射できるSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)です。北極星2型が2017年5月に発射され、そしてとうとう火星12型です。これはムスダンの後継ですが、グアム島を射程に収めています。本土ではありませんが、アメリカを直接攻撃できるようになったのです。

 火星14型は7月に2回発射されましたが、すでにアメリカのほとんど全域を射程に入れました。そして11月に火星15型です。先程も述べたように、これはまだ技術的に未完成ですが、本当に脅威です。当然、アメリカやオーストラリアに向けて実際に打つことはできませんから、やはり上空を狙うしかありません。実験データを得るためには打ち上げなければならないのですが、気をつけないとアメリカに落ちてしまっては、戦争になります。相当苦心しながら、北朝鮮はミ...
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