2018年激動の世界と日本
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ハードブレグジットを選択したイギリスの現状
2018年激動の世界と日本(7)ブレグジットの行方
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
2016年に行われたイギリスのEU離脱を問う国民投票の結果は、世界を驚かせた。なぜイギリスはブレグジット(BREXIT)を選択したのか。テリーザ・メイ首相がハードブレグジットを選んだために、ヨーロッパは混乱している。公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏が、イギリスの現状を解説する。(2018年1月16日開催島田塾会長講演「激動の世界と日本」より、全14話中第7話)
時間:9分45秒
収録日:2018年1月16日
追加日:2018年4月22日
カテゴリー:
≪全文≫

●キャメロン首相が、2013年に国民投票を約束していた


 次は欧州について見ていきましょう。まずブレグジット(BREXIT)です。新聞を読める人、ものを語れる人は、まさかイギリスがEUを離脱するなんてあり得ないと思っていました。ところが2016年6月23日、本当に起きてしまったのです。これは大変なことです。なぜデーヴィッド・キャメロン前首相は、国民投票という愚かなことを思いついたのでしょうか。

 実はキャメロン首相は、2013年に国民投票を約束していたのです。当時、イギリスは不況でした。もともとイギリス人はEUが大嫌いです。お金ばかり取るし、規制がうるさくてかなわないと思っていました。そこでキャメロン前首相は、もし2015年の総選挙で保守党が勝てば、EU離脱の国民投票をすると発表したのです。

 これは選挙民の注意をそらすためのキャメロン前首相の作戦でした。当時、保守党が分裂したのに加え、イギリス独立党(UKIP)という変な政党が現れて、彗星のように票を集めていたからです。保守党としては恐怖だったのです。こうしたことから国民の関心をそらすために、国民投票が提案されました。ずっと前にも、ハロルド・ウィルソン首相が同じ作戦を打って成功した事例があったからです。


●中年以上の地方に住む人びとが離脱に投じた


 結果的に、2015年5月の選挙では保守党が大勝します。そのため公約を果たさなければならなくなりました。2017年に行われる予定を、16年に前倒しして国民投票を行ったわけです。そしてブレグジットというまさかの結果になりました。

 当時、離脱派を仕切っていたのは、薄い金髪のロンドン市長のボリス・ジョンソン氏です。ジョンソン氏はキャメロンさんの盟友でした。ともにEU残留を支持するはずだったのですが、ジョンソン氏が裏切ります。あるいは、マイケル・ゴーヴ法務大臣は頭の切れる人ですが、彼も裏切りました。

 彼らは、当時のイギリス独立党党首ナイジェル・ファラージュ氏とともに、赤いバスをたくさん走らせて、ブレグジットを宣伝したのです。彼らの主張はこうでした。イギリス人は毎週3.5億ポンドもブリュッセルにかすめ取られている。EUを離脱すれば、イギリスの医療は劇的に改善する、と。

 知識のない国民はこれを聞いて同調し、ブレグジットに賛成したのです。投票結果を見ると、ロンドンの市民はステイ、高学歴者や若い人もステイで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(4)トランプ大統領VS.中国
トランプ政権は実は与しやすい?…ディールで「時間稼ぎ」
垂秀夫