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政治家は未来の日本のために命をかけるべきだ

2018年激動の世界と日本(14)日本の財政問題

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
安倍政権は2017年総選挙で盤石の体制を築いたが、一方で財政赤字は極めて深刻な状況にある。公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏が、最後のテーマとして日本の財政問題を取り上げ、経済破綻の可能性に向き合ってこそ政治家だと喝破する。(2018年1月16日開催島田塾会長講演「激動の世界と日本」より、全14話中第14話)
時間:12:34
収録日:2018/01/16
追加日:2018/04/22
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≪全文≫

●小池氏は流れを完全に読み間違えた


 最後に日本について考えていきましょう。2017年の総選挙で、安倍政権は大勝しました。小池百合子氏の新党が勝つ見込みもかなりあったのですが、彼女は自らの立ち位置を見誤りました。

 小池氏は私に、3つの目があると語ったことがあります。第1は鳥の目で、それで世界を見るそうです。第2は虫の目で、ゲリラ戦ができます。第3は魚の目で、流れを読むというのです。ですから、彼女が新党を立ち上げたときには、このように一人で風を起こして勝っていくのかと感心して見ていたのですが、どうやら前回の総選挙では流れを完全に読み間違えました。

 小池氏は自民党にコケにされ、いじめられているからこそ同情票が集まりましたが、指導者としての立場を確立してから同じことをしても、世論は反発するだけです。そのおかげで、安倍晋三首相は大変強固な政権が構築できました。


●社会保障の「ワニの口」が財政の「ワニの口」を生んだ


 安倍首相が掲げたのが、教育無償化と全世代の社会保障です。しかし、これを実現するには莫大な予算が必要です。約2兆円かかるという試算でした。財界に3,000億円出させるとして、消費税を8パーセントから10パーセントに増税した税収から、残りの予算を出させて欲しいと訴えて、選挙にのぞんだのです。しかし、この政策は財政赤字の累積を激化させます。

 この図は日本の財政赤字を示しています。1990年代から2000年代、失われた20年にかけて山ができました。経済成長はせず、社会保障給付も伸びず、しかもこの時期に世界の人口動態の中で見ても、日本が一番高齢化が進みました。だから、こうした財政赤字の山ができたのです。

 次の図は、主要国の財政赤字を比較したものです。日本は赤線です。1990年初頭、失われた20年が始まる前には、日本は黒字でした。当時、世界はどこも赤字だったのです。ところが、その後の20数年で最悪の状況に陥りました。

 今度はストックを見てみましょう。これも赤線が日本です。90年は世界の優等生の1人でした。マーストリヒト条約の条件で考えれば、EUに十分に加盟できる水準です。しかし、現在の日本はどうやってもEUには入れません。

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