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トランプ大統領は経済学の基本が分かっていない

2018年激動の世界と日本(4)トランプの経済政策

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
公立大学法人首都大学東京理事長・島田晴雄氏は、ドナルド・トランプ大統領は経済学の基本を理解できていないと喝破する。貿易収支の不均衡を不当貿易のせいにしたり、無闇にWTOを批判してみせたりと、話題に事欠かないトランプ大統領。経済政策の柱となる税制改革とインフラ投資について解説する。(2018年1月16日開催島田塾会長講演「激動の世界と日本」より、全14話中第4話)
≪全文≫

●トランプ大統領は経済学の基本が分かっていない


 ドナルド・トランプ大統領は、頻繁に米中間の貿易収支が悪いことを不当貿易のせいだと主張し続けていますが、経済学の基本が分かっていません。ペンシルバニア大学を出たはずですが、学歴詐称ではないかと感じるほどです。

 経済学を学んだ人なら誰でも知っていますが、2国間の貿易収支は貯蓄投資バランスの差で生じます。アメリカの貯蓄が少なく、中国の貯蓄が多いから、結果としてそうなるわけです。日本でも同様です。こうした基本が全く分からずに、不当貿易の結果だとののしってばかりです。

 あるいは、メキシコに壁を建設するという計画もありました。メキシコに壁を建設する予算を出せと言ったのです。メキシコ大統領はもちろん拒否しました。結局アメリカで予算化しようとしましたが、15億ドルかかることが分かりました。そんな予算は普通は執行できないはずですし、どこからお金を出しているか分かりませんが、少しずつ壁をつくっているようです。

 NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉も開始されました。NAFTAとは、アメリカとカナダとメキシコによる非常に先進的な自由貿易協定です。トランプ大統領は、「これはアメリカの利益にならない、メキシコだけが得をしている」と言って、貿易赤字の削減を明記させました。それが自由貿易圏の規定だというのです。

 しかし、経済行動の結果として貿易がどうなるかが決まるのであって、最初にそんな規定をしても無意味です。結局トランプ大統領は、国際協力も経済原則も市場も何も分かっていない、単なるゴルフ場のおやじです。


●WTOが崩壊してしまうかもしれない


 トランプ大統領のWTO(世界貿易機関)批判も相当に過激です。WTOに意見書を出したのですが、その冒頭には「アメリカは他国が決めたルールに従う意図も義務もない」と書いてあります。しかしそもそも、WTOをつくったのはアメリカです。GATT(関税及び貿易に関する一般協定)では駄目だからとWTOをつくったわけです。ビル・クリントン前大統領が死ぬほど頑張ってつくった、素晴らしい協定です。

 WTOへの意見書は、ダースベイダーかあるいはラスプーチンのような、スティーブ・バノン氏が書いたようですが、トランプ大統領は意味が理解できていません。ところが部下たちは親分がそういう態度ですから、WTOで議事妨害をして委員も選任しま...
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