日本人が知らない自由主義の歴史~前編
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
ホッブズ、ロック…生命、自由、財産の権利をどう守るか
第2話へ進む
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
近代社会をつくり、現代にまで続く「自由主義」思想。この「自由主義」は、その言葉についても意味についても、意外なほどきちんと理解されていない。現代の日本では、まったく正反対とも思える主張について「リベラル」という言葉で語られることもある。実は、それはそれで経緯からすると正しい部分もあるというが、とてもわかりづらいのも事実だ。世界的にも重要な「自由主義」の歴史を、きちんと知っておく必要がある。そこで本講座では、「自由主義とは本当はどういうものなのか」について解説する。まずはその自由主義の基本を見ていこう。(全7話中1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分54秒
収録日:2022年7月1日
追加日:2023年4月18日
≪全文≫

●なぜ今、自由主義を学ぶ必要があるのか


―― 皆さま、こんにちは。本日は柿埜真吾先生に、自由主義の歴史についてお話をいただきたいと思います。先生、どうぞよろしくお願いいたします。

柿埜 よろしくお願いいたします。

―― 今回、「自由主義」についての講義になりますが、なぜ今、「自由主義」を学ぶ必要があるとお考えでしょうか。

柿埜 「自由主義」とは近代社会をつくった思想なのですが、これがどういうものかということは、実は意外ときちんと理解されていません。言葉についても、「リベラリズム」と「自由主義」の両方が使われていて、かなりの混乱があります。

 きちんと整理をし、「自由主義とは本当はどういうものなのか」を一度、きちんと考えてみる必要があると考えるわけです。

―― このあとの深掘り講義でも詳しく見ていきますが、ほぼ対極にあるような意見が「自由主義」で語られたりしています。これは整理をしないと、同じ「自由」といっても何を言っているのか分からなくなってしまうことになる。しかも、日本だけではなくて、ヨーロッパでもアメリカでもそうだということなのですよね。

柿埜 ええ、そうですね。「リベラル」というと大体、どちらかというと「左翼の再分配を重視する人たち」を意味することが多いのですが、「自由主義経済」というと、「自由市場を重視する人たち」という意味になります。

 こういうものについて、「なぜ、どちらも自由主義と呼ばれているのか」は、歴史を見なければなかなか分からないのです。

―― そうしますと、「『自由主義』とはひと言でいってどのような思想か?」とあります。ここはいかがでしょうか。

柿埜 「自由主義」というものは、「個人の選択の自由」を重視する思想だということが一番重要な点です。自由といっても「自分は自由気ままに生きているのだ」といったような社会と関係のない自由ではなく、「自由を守るための政治制度をつくる必要がある」という考え方です。

 つまり自由主義とは、「個人の自由を尊重する政治思想」なのです。ただ、これについて、経済的自由を大事にするのか、あるいは再分配を大事にするのかといった問題を巡っては、自由主義の中でもいろいろと対立がある。そのため、少し分かりづらくなっているわ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫