日本人が知らない自由主義の歴史~前編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アダム・スミスの見えざる手…その真の意味と論理とは
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(3)アダム・スミスの『国富論』
哲学と生き方
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
自由主義の発想は、「政府が介入せずに、自由にしたほうが、社会も経済もうまく回る」という自由市場経済とともに発展していくことになる。そのような思想を代表するものこそ、まさに、アダム・スミスの『国富論』であった。アダム・スミスは「見えざる手」を論じたが、だが、けっして神学的な議論でその結論を導いたわけではない。また、「市場万能主義者」でもなかった。では、アダム・スミスは何を説いたのか。今回はアダム・スミスの指摘したことを読み解きながら、自由主義や自由市場の基盤的な考え方について解説する。(全7話中3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:6分14秒
収録日:2022年7月1日
追加日:2023年5月2日
≪全文≫

●政府は万能ではない、自由にしたほうが社会はうまく回る


―― 今度は「自由主義」と「自由主義経済学」との関連ですね。

柿埜 ええ。先ほど(第2話)ロックの話でもしましたけれども、政府が何でも命令しなくても社会はきちんと機能するという発想が、自由主義的な経済学の発想です。

 これは、ロック自身が経済に関しても、高利禁止法のようなもので極端に金利を低くする政策はかえって逆効果になるといった、やや不十分なのですが、そういった指摘をしています。ロック自身が経済学に関心があった方なのですが、自由主義的な発想と経済学は非常に相性がいいわけですね。

 近代以前は、好き勝手に哲学者が考えた発想・アイデアで「人間はこういうものであるべきだ。こういうことをすればいいのだ」ということを書いている人がたくさんいたわけですが、近代になって「人間の社会には、きちんと法則がある」ということが認識されてきます。

 例えば、「パンの価格は安いほうがいいから、パンは低い値段にする。あるいは無料にする」という法令を政府が出したら、パンをつくる人は誰もいなくなります。これでは、かえって逆効果になってしまいます。あるいは「金利を取るなんてけしからん」と言って、金利を取ること自体を禁止してしまったら、お金を貸す人は誰もいなくなります。

 人間の社会にはきちんとルールがあって、それで回っている。政府が勝手に適当な法律を決めたからといって、その通りになるわけではない。極端な話、「息を止めなさい」という法律を政府がつくっても、誰も守らないし、それでは何もなりません。あるいは、「空を飛べ」という法律があっても、できませんよね。そういったように、政府は万能ではない、自由にしたほうが社会はうまく回るのだ、という発想が出てくるわけです。

 これは、ロックのあとに出てきたヒュームや、アダム・スミスがそうで、彼らは自由主義の代表的な哲学者でもあるわけですが、「(そうすれば)市場経済は非常にうまく機能するのだ」ということを指摘します。

 19世紀になると、ベンサム、リカードといった人たちが出てきて、自由主義の考え方に基づいて自由貿易や規制改革を進めていくことになります。

―― 実際、それで社会が変わっていくことになるわけですね。


●アダム・スミスの「見えざる手」...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(1)「キレる高齢者」の正体
「キレやすい」の正体とは?…ヒトの「怒り」の本質に迫る
川合伸幸
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照

人気の講義ランキングTOP10
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
世界のジョーク集で考える笑いの手法と精神(1)体制を笑うジョークと諷刺の精神
ジョークの精神…なぜ人は厳しいときほど笑いを磨くのか
早坂隆
未来を知るための宇宙開発の歴史(12)宇宙推進技術はどこまで進化したか
水平離着陸で宇宙へ、近未来のロケット像と進む技術開発
川口淳一郎
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
クーデターの条件~台湾を事例に考える(4)クーデター後の民政移管とその方策
軍政から民政へ、なぜ李登輝はこの難業に成功したのか
上杉勇司
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明