経済社会と「隠れた価値」の行方
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
ある水準を超えるとHappinessと所得の関係はファジーになる
第2話へ進む
「hidden Value」をどのように考えるかが重要
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
われわれは経済社会の中で生活しているにもかかわらず、その中でどのような価値が隠れているのか、よく知らない。吉川洋氏によれば、価値は主観的なものであり、それ自体は決して人間の幸福を直接的に測る基準ではないという。しかし、それでもGDPと平均寿命の相関関係からも分かる通り、経済は人間の幸福と密接に結びついている。今回の対談シリーズは、経済がそれ自体、主役でない、いわゆる「縁の下の力持ち」であることを明らかにする。(全5話中第1話)
時間:11分16秒
収録日:2020年3月2日
追加日:2020年5月1日
≪全文≫

●経済の中で価値はどのように生まれるのか


吉川 かなり昔のことですが、小宮山宏先生とは大学の会議の後などによく雑談させていただきました。その時、小宮山先生は専門が理系ですから、「人間が何をしてもエネルギーの総量は変わらないのに、経済のGDPはどんどん成長して数字が大きくなっていくというのは妙な話ですね。経済というのは面白いですね?」という、ファンダメンタルな質問をしていただきました。

 この点こそ、まさに経済の根本に関わります。GDPは、いろんな人間の活動を価格で評価したものを全部足し合わせるということです。そもそも価格とは、人間が主観的に点数を付けている、それだけのものなのです。

 ちなみに、経済学の歴史を振り返ると、「労働価値説」というものがありました。どこかで聞かれたことがあると思います。

小宮山 聞いたことがあります。

吉川 労働価値説とは、「モノにインプットされた労働の価値がモノの価値である」という考え方です。昔は、そういう考え方がありました。

 しかし、今はそれを支持する人はいません。基本的には、先ほどいったように「人間が主観的に点数をつけているだけだ」という考え方が取られています。

小宮山 ケインズ(ジョン・メイナード・ケインズ)のいう「人気投票(美人投票)」と同じですか。

吉川 ケインズの指摘は、金融市場を対象としています。金融市場では、皆が転売するので、ファンダメンタル、つまり大元がないのです。ただ、モノの場合には、ある意味でファンダメンタルがあります。普通、われわれはモノを買えば、モノから何らかの効用を享受します。

小宮山 効用ですね。

吉川 お菓子を食べればおいしいと思う。それがファンダメンタルであり、これが大元にあります。例えば、それが100円なら買おうと思うという場合、普通そのお菓子を転売するということはありません。この場合には、モノの効用によるアンカーがあるわけです。その意味では、ケインズの美人投票とは、少し異なります。


●価値は主観的なもので、人間の幸福と一致しているわけではない


吉川 しかしながら、価値、つまり「何をどれくらい好むか」という基準は十人十色です。つまり、価値とは主観的なものです。

 しかし、多くの場合、結局価格は一つに決まっています。その価格は主観的に決まるのですが、毎日のようにマーケットで投...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(4)トランプ大統領VS.中国
トランプ政権は実は与しやすい?…ディールで「時間稼ぎ」
垂秀夫