経済社会と「隠れた価値」の行方
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地域を超えてwelfareを代表するような評価をできないか
経済社会と「隠れた価値」の行方(3)貨幣と地域経済
Amazonなど便利な物流の登場で、町の小さな本屋などで行われてきた対面のコミュニケーションなどの、商品化されない効用は姿を消しつつある。小宮山宏氏は、新たな貨幣体系を創設することで、こうした既存の経済システムでは賄い切れない価値をすくい取ることの重要性を強調する。吉川洋氏は、そうした提案自体はハイエクのような経済学者によって提起されてきたが、小宮山氏の問題意識の解決にはつながらないのではないかと懐疑的である。(全5話中第3話)
時間:10分02秒
収録日:2020年3月2日
追加日:2020年5月15日
≪全文≫

●分権的な貨幣システムは昔から提唱されてきた


吉川 貨幣については、そもそも「貨幣とは何か」という疑問から始まると思いますが、そこは私自身よりもむしろ最近出た本をご紹介したいと思います。

 私の先輩に当たりますが、岩井克人氏がNHKで放映した「欲望の資本主義」の中で語った話を中心にした『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』という本があります。丸山俊一氏というディレクターがまとめた本で、東洋経済新報社から出版された近著ですが、それをいただきました。とても分かりやすくて、すぐに読める本です。

 話を戻すと、ご存じの通り現在では、貨幣はほとんどの国で中央銀行が発行しています。一方で、小宮山先生がいうように、ビットコインなど仮想通貨を用いて分権化するというアイデアは、昔からあります。ハイエク(フリードリヒ・ハイエク)というオーストリア学派の有名な経済学者がいます。シュンペーター(ヨーゼフ・シュンペーター)と同世代の人ですが、彼は分権的な貨幣という提起を盛んに行っていました。

 ハイエクは自由主義者で、貨幣の発行はある意味、中央集権化されていますが、そこにも競争原理を導入しようというのです。中央銀行以外の機関も貨幣を自由に発行させて、貨幣の間のコンペティション(競争)を促そうという考え方です。

小宮山 貨幣のコンペティションですね。それはドルや円で起きているのではないですか。

吉川 いや、ドルや円は基本的には中央銀行が発行していますから。

小宮山 なるほど、そういうことですね。昔、江戸時代に藩札を出していましたね。

吉川 ありました。ただ、そうした議論をする前にいいたいのは、貨幣は単なる数字と捉えられるという考え方は、別に新しいことではないということです。ビットコインなど仮想通貨も、基本的には単なる数字です

 つまり、日本では1万円札や500円玉などがありますが、時々誤解されるのは、それこそ貨幣だと思われているということです。しかし、それらは現金通貨です。われわれのような経済学者や経済の世界では、基本的に銀行預金が貨幣なのです。現金通貨は、今のマネーのうちの1割にも届きません。

小宮山 1割にも満たないのですか。

吉川 満たないです。9割以上は、預金通貨なのです。クレジットカードを考えても分かる通り、さまざまな振込みや決済は基本的には数字の交換だけで行われて...

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