経済社会と「隠れた価値」の行方
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
地域を超えてwelfareを代表するような評価をできないか
経済社会と「隠れた価値」の行方(3)貨幣と地域経済
Amazonなど便利な物流の登場で、町の小さな本屋などで行われてきた対面のコミュニケーションなどの、商品化されない効用は姿を消しつつある。小宮山宏氏は、新たな貨幣体系を創設することで、こうした既存の経済システムでは賄い切れない価値をすくい取ることの重要性を強調する。吉川洋氏は、そうした提案自体はハイエクのような経済学者によって提起されてきたが、小宮山氏の問題意識の解決にはつながらないのではないかと懐疑的である。(全5話中第3話)
時間:10分02秒
収録日:2020年3月2日
追加日:2020年5月15日
≪全文≫

●分権的な貨幣システムは昔から提唱されてきた


吉川 貨幣については、そもそも「貨幣とは何か」という疑問から始まると思いますが、そこは私自身よりもむしろ最近出た本をご紹介したいと思います。

 私の先輩に当たりますが、岩井克人氏がNHKで放映した「欲望の資本主義」の中で語った話を中心にした『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』という本があります。丸山俊一氏というディレクターがまとめた本で、東洋経済新報社から出版された近著ですが、それをいただきました。とても分かりやすくて、すぐに読める本です。

 話を戻すと、ご存じの通り現在では、貨幣はほとんどの国で中央銀行が発行しています。一方で、小宮山先生がいうように、ビットコインなど仮想通貨を用いて分権化するというアイデアは、昔からあります。ハイエク(フリードリヒ・ハイエク)というオーストリア学派の有名な経済学者がいます。シュンペーター(ヨーゼフ・シュンペーター)と同世代の人ですが、彼は分権的な貨幣という提起を盛んに行っていました。

 ハイエクは自由主義者で、貨幣の発行はある意味、中央集権化されていますが、そこにも競争原理を導入しようというのです。中央銀行以外の機関も貨幣を自由に発行させて、貨幣の間のコンペティション(競争)を促そうという考え方です。

小宮山 貨幣のコンペティションですね。それはドルや円で起きているのではないですか。

吉川 いや、ドルや円は基本的には中央銀行が発行していますから。

小宮山 なるほど、そういうことですね。昔、江戸時代に藩札を出していましたね。

吉川 ありました。ただ、そうした議論をする前にいいたいのは、貨幣は単なる数字と捉えられるという考え方は、別に新しいことではないということです。ビットコインなど仮想通貨も、基本的には単なる数字です

 つまり、日本では1万円札や500円玉などがありますが、時々誤解されるのは、それこそ貨幣だと思われているということです。しかし、それらは現金通貨です。われわれのような経済学者や経済の世界では、基本的に銀行預金が貨幣なのです。現金通貨は、今のマネーのうちの1割にも届きません。

小宮山 1割にも満たないのですか。

吉川 満たないです。9割以上は、預金通貨なのです。クレジットカードを考えても分かる通り、さまざまな振込みや決済は基本的には数字の交換だけで行われて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦国武将の経済学(1)織田信長の経済政策
織田信長の経済政策…楽市楽座だけではない資金源とは?
小和田哲男