国際変動の中の経済政策
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激変する現実を理解し普遍化するために優れた解説者が必須
国際変動の中の経済政策(3)普遍原理としての学問と現実の激変
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
学問に国境は関係ない。学問は時代や地域を越えた普遍性を持っている。しかし、経済学などその知見をもってしても、国際秩序が不安定となるなど国際社会の荒波の影響を受けると、学問自体が変化しなければいけない。そうした中で、まだ学問が追いついていない現実をしっかりと理解するには優れた解説者が必要だと曽根氏はいう。今回は普遍原理としての学問と国際社会の関係について考える。(全3話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分27秒
収録日:2023年3月31日
追加日:2023年8月5日
≪全文≫

●学問の普遍性と地域ごとの特殊性をどのように考えるべきか


―― そのような時代背景を含めて考えるときに、今後、いわゆる学問や理論がどういう動きをしていくかというところですが、いかがでしょうか。

曽根 これは今までも気がついている部分でもあるし、まだ気がつかなかったところでもあるのですが、物理学や数学には、国境が関係ない。数学の方程式が国によって違うということはあり得ないのです。物理学の実験をイギリスでやろうが、アメリカでやろうが、日本でやろうが、実験室の実験というのは、地球上である限りどこでも不変です。だから、科学論文は国籍関係なしに評価されます。

 経済学も実は数学を使っているところもあるし、普遍的な学問として広めているので、あまり国の違いは考えなくて済む学問の1つです。文化人類学や社会学になると、国による差はすごく大きくなります。

 また、哲学は本来、普遍的な学問です。普遍的な学問として代表的なのは、ジョン・ロールズの正義論です。しかし、ジョン・ロールズの正義論はアメリカで妥当する議論なので、格差原理というものを世界に広めたらどうなるのかというと、ずいぶん困ってしまうわけです。一番貧しい人を、アメリカの一番貧しい人に置くのか、アフリカの一番貧しい人に置くのかですごく変わってくるし、それから国と国との違いもあります。

 よく日本の民族派の人たちや、特に中国が主張しているのは、西洋の原理を主張しているが、それは普遍原理ではなくて西洋原理ではないのかということです。それぞれの国にはそれぞれの国の歴史があるのだから、中国がいう民主主義や自由主義は、アメリカやイギリスがいう自由主義とは違うのだという、一見もっともらしい説があります。これに、意外とみんなコロッと騙されてしまうのです。

 その点でいうと、経済学は比較的、数学や物理学に近くて、どこの国でも妥当します。GDPのような単位がありますが、それは国民経済の単位を国で切っているだけであって、そこで使われる原理はどこの国でも妥当するということです。中国だろうと、ロシアだろうと妥当します。国と国との関係は貿易ということで理解すればいいということです。

 ただ、ここの難しさを正面切って批判できるかというと、中国の経済の場合、劉鶴という経済学者が西側の経済学を分かっている人で...

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