国際変動の中の経済政策
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
激変する現実を理解し普遍化するために優れた解説者が必須
国際変動の中の経済政策(3)普遍原理としての学問と現実の激変
政治と経済
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
学問に国境は関係ない。学問は時代や地域を越えた普遍性を持っている。しかし、経済学などその知見をもってしても、国際秩序が不安定となるなど国際社会の荒波の影響を受けると、学問自体が変化しなければいけない。そうした中で、まだ学問が追いついていない現実をしっかりと理解するには優れた解説者が必要だと曽根氏はいう。今回は普遍原理としての学問と国際社会の関係について考える。(全3話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分27秒
収録日:2023年3月31日
追加日:2023年8月5日
≪全文≫

●学問の普遍性と地域ごとの特殊性をどのように考えるべきか


―― そのような時代背景を含めて考えるときに、今後、いわゆる学問や理論がどういう動きをしていくかというところですが、いかがでしょうか。

曽根 これは今までも気がついている部分でもあるし、まだ気がつかなかったところでもあるのですが、物理学や数学には、国境が関係ない。数学の方程式が国によって違うということはあり得ないのです。物理学の実験をイギリスでやろうが、アメリカでやろうが、日本でやろうが、実験室の実験というのは、地球上である限りどこでも不変です。だから、科学論文は国籍関係なしに評価されます。

 経済学も実は数学を使っているところもあるし、普遍的な学問として広めているので、あまり国の違いは考えなくて済む学問の1つです。文化人類学や社会学になると、国による差はすごく大きくなります。

 また、哲学は本来、普遍的な学問です。普遍的な学問として代表的なのは、ジョン・ロールズの正義論です。しかし、ジョン・ロールズの正義論はアメリカで妥当する議論なので、格差原理というものを世界に広めたらどうなるのかというと、ずいぶん困ってしまうわけです。一番貧しい人を、アメリカの一番貧しい人に置くのか、アフリカの一番貧しい人に置くのかですごく変わってくるし、それから国と国との違いもあります。

 よく日本の民族派の人たちや、特に中国が主張しているのは、西洋の原理を主張しているが、それは普遍原理ではなくて西洋原理ではないのかということです。それぞれの国にはそれぞれの国の歴史があるのだから、中国がいう民主主義や自由主義は、アメリカやイギリスがいう自由主義とは違うのだという、一見もっともらしい説があります。これに、意外とみんなコロッと騙されてしまうのです。

 その点でいうと、経済学は比較的、数学や物理学に近くて、どこの国でも妥当します。GDPのような単位がありますが、それは国民経済の単位を国で切っているだけであって、そこで使われる原理はどこの国でも妥当するということです。中国だろうと、ロシアだろうと妥当します。国と国との関係は貿易ということで理解すればいいということです。

 ただ、ここの難しさを正面切って批判できるかというと、中国の経済の場合、劉鶴という経済学者が西側の経済学を分かっている人で...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
「新しい資本主義」の本質と課題(1)新自由主義と『21世紀の資本』
新自由主義からの時代背景から「新しい資本主義」を問う
柳川範之
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
小原雅博
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
中島さち子
編集部ラジオ2025(20)納富信留先生の「アカデメイア」講義
プラトンのアカデメイアからテンミニッツ・アカデミーへ
テンミニッツ・アカデミー編集部
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(2)ヒトの子育てと脳の関係
チンパンジーは乱婚、ヒトは夫婦…人間の特殊性と複雑性
長谷川眞理子
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
「集権と分権」から考える日本の核心(4)荘園発生から武家の時代、王政復古へ
武士が推進した“私”の増殖…中央集権はいかに崩れたか
片山杜秀
『江戸名所図会』で歩く東京~上水と十二社(1)「水の都」江戸の上水道
玉川上水の歴史…約8カ月で完成?玉川兄弟の功績とは
堀口茉純