●キークエスチョンは自身の身近な問題意識から設定される
―― これまで地域研究の例として、イスラエル、インド、そして明治維新の歴史を挙げていただきました。それぞれの話のポイントとして、キークエスチョンが設定されていたと思います。その問いに収斂させるように、さまざまな研究を積み重ねていると見受けられました。そもそも、このキークエスチョンはどのような発想に基づいて設定されるのでしょうか。
島田 おおもとにあるのは、われわれ自身が直面している問題です。われわれの国が抱えている問題を通してみて、「この国はどこが面白いんだろう」と考えます。そこからキークエスチョンが自然に浮かび上がってくるのです。
例えば、イスラエルに関しては、当然高いレベルの技術開発に焦点が当たります。インドに関しては、IT産業の発展が目を引くことに加えて、おそらく近いうちに中国をしのぐ国になるという事実があります。この国が世界のリーダーになるのであれば、アメリカがリーダーの役割を務めていた時に、われわれが懸命にアメリカを研究したように、今からインドについて研究しておく必要があると感じます。
―― やはり今の日本に対する問題意識から出てくるものなのですね。
島田 日本の将来に対する問題意識ですね。そこから設定されるのではないかと思います。
―― 例えばイスラエルでは、イノベーションを、キークエスチョンとして設定しました。これを深掘りする中で、地域構造や社会構造、歴史背景、地政学、国際関係、技術、思想、宗教、人物、教育など、実に多様な要因が挙げられました。
島田 多様な要因が挙げられますが、やはりイスラエルの場合には、他の国にはない危機感が技術開発の原動力になっていることは、さまざまなことに目を配るとすぐに分かります。そうなると、その危機感の背景を知る必要が出てきます。彼らの危機感の背景を知るには、2000年以上の歴史を遡らなければなりません。こうした点が、地域研究の面白さではないでしょうか。
―― そうですね。先生は、キークエスチョンを、ピンポイントで設定されますよね。今おっしゃったように、イスラエルの技術開発の背景にあるのは危機感だという指摘も、まさしくキーポイントです。
島田 キーですね。
―― こうした点を見つけるのは、難しいのではないでしょうか。どのようにキークエスチョンを設定するか...