国際地域研究へのいざない
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インド研究で重要なイギリス植民地統治の影響への視点
国際地域研究へのいざない(4)インドの歴史と日本との関係
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
今日のインドの政治は、19世紀以降の複雑な歴史的遺産によって規定されている。19世紀半ばにイギリスに植民地化されると、イギリス政府の分割統治の影響によって、インド国内の分断は激しくなった。独立後も、中国との国境紛争や首相の度重なる暗殺など、幾度も悲劇に見舞われてきた。インドは日本に対して友好的であるにもかかわらず、日本側の理解は不足しているため、今こそインド社会をより深く学び、インドとの協調を拡大していくべきだと島田晴雄氏は力説する。(全8話中第4話)
時間:7分00秒
収録日:2020年4月7日
追加日:2020年12月5日
≪全文≫

●現代インドに今も後遺症を残すイギリス植民地統治


 第二次世界大戦後、インドは1947年に独立しました。その過程で、ジャワハルラール・ネルーという素晴らしいリーダーが、3つの理念を打ち出しました。1つはイギリス植民地主義からの脱却、2つ目は平等を重視した社会主義、そして3つ目は宗教を政治に持ち込まないという理念です。また、一党による独裁ではなく、多くの政党や地方社会と協議をしながら、政治の方向性を定めていったのです。

 モディ首相は、こうした理念を全てひっくり返しました。イギリスの植民地主義の後遺症などではなく、とにかく競争して勝てば良いという考えです。さらに、社会主義や計画経済はとんでもないもので、自由主義経済での競争を奨励しています。加えて、多様な国民の協議による統治から、選挙での勝利でその是非を問うなどの考え方を打ち出しているわけです。

 インド独立後、60年以上にわたって、上のような国民会議派の伝統のもとで統治されてきました。こうした伝統は、イギリスによる19世紀以来のインド植民地統治から生まれたものです。19世紀の半ばのインドで、セポイの反乱が起こりました。これは、東インド会社が雇ったインド兵が、搾取的な待遇に不満を持ち、反乱を起こしたものです。こうした動きを抑えようとして、イギリス本国が進出してきました。東インド会社に統治させておくのも問題なので、本国が直接統治する方が良いという結論を、1877年に出しました。この年に、インドは正式に植民地化されました。

 当時、イギリスはヴィクトリア女王の時代で、彼女をインド帝国の皇帝に据えました。しかし、イギリスによるインド統治は、キツネが巨大なゾウを従えるという構造なので、さまざまな手練手管を用いました。基本は分割統治です。

 当時のインドには、「マハラジャ」と呼ばれる統治者がいました。彼らは税を納める必要はなく、巨大な宮殿を持っていました。イギリス政府も、マハラジャの子弟を教育するために、ケンブリッジやオクスフォードに留学、寄宿させていました。さらに、政治運動にもある程度寛容で、国民会議派の出現も許容していました。

 しかし、一方では厳しく統制していた側面もあります。独立間際には、パキスタンをインドから分離させるよう画策しました。パキスタンやベンガル人を含めた地域が全て大インド民族として一体になると、非常に強...

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