国際地域研究へのいざない
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
イスラエルを理解するには苦難の歴史を遡る必要がある
第2話へ進む
なぜ経済学で軽視されてきた「地域研究」が最高の学問なのか
国際地域研究へのいざない(1)地域研究の意味とイスラエル研究
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
経済学では軽視されてきた「地域研究」だが、外交評論家の岡崎久彦氏は自著で「地域研究は最高の学問だ」と書いている。そこで今回のシリーズではいくつかの国を取り上げ、見逃されてきた地域研究の重要性と面白さについて解説する。一つ目の国として、近年急速な技術発展によって注目されているイスラエルを取り上げる。さまざまな分野で世界の技術発展を牽引するイスラエルだが、その原動力は自国の存亡に対する切実な危機感であると島田氏は指摘する。(全8話中第1話)
時間:10分18秒
収録日:2020年4月7日
追加日:2020年11月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●総合的な学問である地域研究は最高の学問


 「国際地域研究へのいざない」というテーマで、地域研究の面白さや、重要性、その意味について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

 私が大変尊敬している方に、岡崎久彦氏がいます。この人は、自他ともに認める異色の外交官で、同時に大変な歴史家です。思想家、哲学者と呼んでも良いでしょう。彼はある著書の中で、「地域研究は最高の学問だ」と書いています。

 私は経済学を学んできましたが、この中には序列があります。経済学の最高の序列は、まず抽象理論です。それからミクロ経済学、マクロ経済学と、抽象度が徐々に下がっていくのです。それから、計量経済学から財政学、金融論、国際経済と続き、抽象度はかなり下がります。開発経済や労働経済では、さらに下がります。一番抽象度が低いのが地域研究です。これは、経済学の中の序列からいえば最低なのです。そのような世界に身を置いていたので、岡崎氏の指摘は非常に新鮮な驚きを受けました。

 私は専門外ですが、政治学という分野があります。政治学は、ある既存の大きなパラダイムがある中で観察事実を整理し、そのパラダイムとの適合性を検定する学問だと思います。

 ところが、地域研究では、非常に多様な要因を同時に考える必要があります。例えば地形や構造、そしてその中で人びとが持つ社会構造などが挙げられます。さらに、歴史的背景も重要です。加えて、周囲の国々との関係を分析する地政学、より広い世界からの国際関係、技術進歩などの観点も必要です。また、思想や宗教も関わってきます。関連する人物のことが分からなければ、その地域のことは理解できません。どのような教育を受けてきたのかという点も重要です。そうなると、地域研究の分野では仮説検定は容易ではなく、なじまないのかもしれません。したがってよくいえば、地域研究は総合理解の学問なのです。

 岡崎氏は、ある国、ある時代に着眼し、あるがままの姿を観察して、事実を丹念にさまざまな角度から研究するといっています。そうした事実から、ある種の理解や示唆を得る点に、地域研究の面白さや高い価値があるのではないかといっていたように思います。

 岡崎氏は、歴史を語る際に、しばしば左翼史観を批判しました。例えば、左翼史観の研究者は、得てして帝国主義を批判します。しかし岡崎氏にいわせれば、現代の観点...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓