●多数のローカル5Gとパブリック5Gを渡り歩くローミング技術の必要性
それからもう一つ、ローカル5Gの運営主体が多数登場してきますと、これらを端末が渡り歩くというユースケースが生じると思われます。例えば、ローカル5G-A、ローカル5G-Bなどの運営主体があったとします。さらに全国通信業者のパブリックの5Gが存在しますので、そうした状況でモバイル端末がスライドのような移動をしていくとなると、多数のローカル5Gとパブリック5Gを渡り歩くローミング技術が必要となります。特にローミングは、運営主体が異なるモバイルネットワークを同時に使っていくように認証をうまく設定していくという技術になります。例えば、このようにローカル5Gの限られたエリアから圏外に出た場合にパブリックの5Gにつながっていく、あるいは別のローカル5Gのネットワークにつながっていくといったことが予想されますので、こうした技術も開発が必要となります。
現在、ローミング技術はそんなに多数の運営主体の間を渡り歩くという想定がありませんが、今後は、例えば東京大学内にローカル5Gが、基地局が異なる運営主体、研究室でたくさん運営された場合に、そこを柔軟に渡り歩くことができるローミング技術が必要になります。こうした技術は必ずしも標準化が追いついているわけではありませんので、現場発の局所的な革新によって、柔軟なソフトウェア基地局を実現するオープンソースを活用した多数の主体に関わるローミング技術を開発していくことが可能になると考えています。
●5Gコアのオープンソフト開発で「協調領域」と「付加領域」を推進
これは経産省・NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトになりますが、実際にわれわれは東京大学、APRESIA、富士通、IIJと組みまして、このようなオープンソースの基地局につながる5Gコアネットワークのオープンソースソフトウェア(機器)を使った開発をしています。
ここでは各社、別々のビジネス戦略がありますので、そこでオープンソースをどのように使うかという戦略が必要となります。われわれは5Gコアネットワークのソフトウェア機器をめぐり、「協調領域」と「競争領域」(スライドの絵では「付加価値領域」、略して「付加領域」と呼んでいます)をそれぞれ定義することによって各社が協力できるようにしています。特に協調領域では、オープンソースソフトウェアの5Gコアの機器の品質を向上するところを定義していて、それぞれ付加領域としては違った技術分野を想定して進めています。
特にAPRESIAと東京大学とIIJでは、先ほど述べた5Gコアのローミング機能を付加領域として定義していまして、こうした戦略のあるオープンソースの開発を進めることによって新たな革新エリアを自分たちで民主化により構築をしようとしています。
実際は、このように将来のローカル5Gあるいはローカル6Gに向けたSAローミングの進化が期待されていますので、それを先導的な研究によって実現しようという活動となります。
●オープン性を活用する公衆網と自営網の設備共用
それからもう一つ。こちらも経産省・NEDOのプロジェクトになりますが、楽天モバイル、NEC、東京大学で進めているプロジェクトを紹介したいと思います。
ソフトウェア基地局を東京大学が整備するきっかけとなったのは、ローカル5Gのインフラの価格破壊を進めたいという思いからだったわけですが、もう一つ、オープン性を活用した公衆網と自営網の設備共用による価格破壊のアイデアも持っています。
これは少し専門的になりますが、5Gのネットワークの構成を理解してもらう必要があります。スライドの一番左側に「5GC」と書かれたのが5Gのコアネットワークとなります。これに5Gの基地局「gNB」という装置がつながっていきますが、下のほうの左側に「MNO」と呼ばれるMobile Network Operator、つまり全国事業者、例えば楽天モバイルのような会社が整備する基地局、それから5Gコアシステムがつながっている絵が見て取れると思います。
もしわれわれがローカル5G(その右にある装置)を構築しようとしますと、通常は5GC、それからローカル5GのCU、DU、RUを全て自前で用意しなくてはいけません。しかし、楽天モバイルはソフトウェア基地局、ソフトウェアコア装置を用意していますが、もしこれがクラウド化されて貸し出し可能になっていれば、われわれのローカル5GはCU、DU、RUのみを準備するだけで、後は楽天モバイルが提供する5GCのクラウド化された機能を利用して、そこにつなぎ込んでいくということが可能となります。こうすることで、ローカル5G側で用意する装...