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「今後の6Gはローカル6Gから始まる」とはどういうことか

Beyond5G・6Gで進む情報通信の民主化(3)ローカル6Gと民主化のアプローチ

中尾彰宏
東京大学大学院情報学環 教授
情報・テキスト
「今後の6Gはローカル6Gから始まる」と中尾氏は言う。これは一体どういうことか。自営網の制度化によって、一般の事業者が免許を取得してローカル5Gの整備が可能となった。そこで現場発の仕様によってカスタム化が行われ、そのことがローカル6Gの技術へとつながっていく。そうしてできた共通仕様が公衆網の6Gへと取り入れられていく。ここで重要なのは現場発の仕様策定だ。そこに、通常のアプローチとは異なる「民主化のアプローチ」のポイントがある。(全9話中第3話)
時間:08:25
収録日:2021/01/27
追加日:2021/03/30
タグ:
≪全文≫

●今後の6Gはローカル6Gから始まる


 こちらのスライドも私がいろいろなところでお話をしているチャートになります。今後の6Gはローカル6G(Local6G)から始まると考えています。このローカル6Gとは何か。ローカル5Gの誤植ではなくて、ローカル6Gから始まっていくということです。

 通常5Gから6Gはこれまでの1Gから4G、第1世代から第4世代、第5世代へと進化してきたのとまったく同じように、通常の進化によって公衆網5Gから6Gへと進化を遂げていくことになるでしょう。

 しかし、実は自営網の制度化がなされて、一般の事業者が免許を取得してローカル5Gを課題ドリブン(課題駆動型)で整備することが可能となりました。ローカル5Gの中では、現場発の仕様によってカスタム化がどんどん行われていくことが予想されます。現場発で課題解決にちょうど必要なカスタム化が行われて(そのカスタム化というものは課題によってそれぞれ異なるのですが)、そうした現場発の進化を遂げた結果がそれぞれの地域での局所的な改革、つまりローカル6Gの技術につながり、これの共通仕様が6Gへと取り入れられていくことが予想されます。

 したがって、スライドが示しているように、通常の進化で進んで行く世代間の革新、これに現場発の進化が加わって、6Gがより現場の課題解決に役立つような共通仕様が決められていくことが期待されます。

 ここでいっている「現場発の進化」とは何か。「現場発の仕様が革新を起こす」と書いています。われわれ大学の研究室が情報通信の提供側になることによって、いろいろな革新を起こすアイデアが醸成されています。ここに挙げたリストはわれわれが進めている研究になります。全てを紹介することはできませんが、例えば「価格破壊・自営網展開キット」ですが、一つキットを買ってくれば、ローカル5Gがその場で展開できるようなものです。あるいは「低消費電力基地局」ですが、今後カーボンニュートラル、それからエコなシステムを作っていかなくてはいけないことを考えると、基地局の低消費電力化、特に高周波を使う基地局に関していうと、低消費電力であることが望ましいのです。

 他には衛星とローカル5Gの通信連携、アプリケーションスライシング、カスタムセキュリティ、AIによる運用自動化、ローカル5GのFederation Roamingといった、複数のローカル5Gが出てきたときのローミングです。こちらも後ほど説明しますが、こうしたいろいろなアイデアがローカル5Gの現場で生まれてきているのです。


●民主化のアプローチと通常のアプローチの違いは「実装」の段階


 民主化のアプローチというものは、従来のアプローチと比べると大きな違いがあります。ひと言でいうと、現場発の仕様策定ということになります。

 従来、どのような世代の進化が行われてきたかというと、まずホワイトペーパーを作成して、ここではユースケースの課題の紙上理解をします。これは多くの場合、ディスカッション、それから学会のような場でいろいろな人がこんなユースケースがあるということを発表したり、論文にしたりしてホワイトペーパーを作っていきます。このユースケースの課題の紙上理解が終わりますと、そこから共通仕様のあぶり出しが行われて、標準化され、実装、PoC(ポック)が行われます。これらの実装から実証実験を通して、最終的にビジネスになっていきます。これが通常のアプローチになります。

 一方で民主化のアプローチは、私は違うと考えております。まずユースケースは実践で理解する、つまりその現場における課題を正確に理解する必要があると考えています。実際にその現場で課題の実践理解が進みますと、カスタム仕様の実装が起こります。これは、例えばローカル5Gに当てはめてみると、地域課題を解決するソリューションを先に作ってしまうことを意味します。その後、実証実験をたくさん行いまして、ビジネスが起こり、そこから「デファクトスタンダード」と呼ばれる実際上の標準化が行われていきます。最終的に共通仕様があぶり出され、それが「デジュールの標準化」に結びついていきます。

 上のケースと下のケースを比べますと、「実装」と書かれた段階が大きく違うことが分かると思います。民主化のアプローチでは実装が先に来て、その後でデファクトスタンダード、共通仕様のあぶり出し、標準化が起こっていくことになります。

 このように、課題を解決するための革新が局所的にたくさん起こっていき、それが最終的に共通仕様であぶり出されて標準化されていく。このような進化の方法もあるのではないかと考えています。


●情報通信の民主化によってあらゆる分野へコミュニティの拡張が起こる


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