●ローカル5Gと公衆網の5GとWi-Fiの違い
身近となった情報通信の民主化ですが、ここでローカル5Gの概要について少しおさらいをしておきます。
ローカル5Gは、地域や産業の個別なニーズに応じて地域の企業や自治体等のさまざまな主体が自らの建物内や敷地内でスポット的に柔軟に構築できる5Gシステムで、まさに情報通信の民主化の一つといえるでしょう。2019年12月にミリ波帯で制度化されました。2020年12月には「Sub6」といわれている6GHz以下の周波数でも免許取得が可能となりました。
いくつか特徴がありますが、特に比較されるのが公衆網の5G、あるいは免許がいらないWi-Fiと比較して何が新しいのかということがよく問われます。
今お見せしているのは総務省の資料です。こちらには携帯事業者の5Gとは異なって、エリア展開が遅れている地域において5Gシステムを先行して構築が可能であったり、あるいは必要となる性能を柔軟に設定することが可能だったり、他の場所での通信障害や災害などの影響を受けにくいといった特徴が挙げられています。またWi-Fiと比較しては、無線免許に基づく安定的な利用が可能となります。
これらの整備は非常に重要で、特に私はいろいろなところでWi-Fiとの違い、それから携帯事業者の5Gサービスと何が違うのかといった質問をよく受けます。基本はこちらに書かれていることですが、資料にあるような特徴を持ったローカル5Gをいろいろな建物内や敷地内で自ら運営する5Gネットワークとして活用していくということが期待されているわけです。
●ローカル5Gが使用する周波数
ここまで述べてきたこれまでの通信のシステムと比較した特徴について、特に重要な観点を少しご説明をしたいと思います。
ローカル5Gが使用する周波数に関しては、こちらも総務省の資料にありますように、ミリ波帯、28GHzの28.2から28.3の100MHzは今後、拡張されていくことになると思います。それから4.5GHz帯の4.6から4.9GHzといったSub6の周波数帯がローカル5Gで使えるようになってきています。
ここから分かるように、通信事業者が免許を取って使われる周波数とは異なるエリアを使い、ここを一般事業者が免許を取得して使っていくことが可能となっているわけです。
●ローカル5Gの3つの良い特徴
ここで、先ほどの繰り返しになりますが、よく聞かれる質問として「ローカル5Gの良さは結局、何なのか」ということを説明したいと思います。
当然5Gですので大容量通信、低遅延通信、超多数接続通信といったことが実現できるわけですが、それでは公衆網の5Gとか、それから最近では「Wi-Fi6」というものが利用されるようになってきていますので、結局大容量、低遅延という観点ではあまり違いがなくなってきているということも挙げられるかと思います。
資料に挙げた3点ですが、これはわれわれが東京大学の研究を進める中でローカル5Gの良さをいろいろな実験を通して体感して整理した3点となります。
第一に、免許制(ライセンス)方式によって安定した通信が実現できるという点が挙げられます。Wi-Fiはアンライセンスであることから非常に利便性は高いのですが、気をつけないとそこら中にWi-Fiのアクセスポイントが乱立してしまって、周波数帯を占有してしまいます。これによって、安定した通信ができなくなってしまう可能性があります。これに対して、ライセンス制のローカル5Gでは、より安定した通信が保証されているといえると思います。
第二に、認証やセキュリティ面で管理運用上のリスクが低いという点が挙げられます。Wi-Fiはパスワード認証で使われることがほとんどを占めます。もちろんパスワード認証ではない使い方、例えば携帯電話でWi-Fiを使うときはその中に入っているSIM認証を使うこともありますが、ほとんどの場合、皆さんがWi-Fiを運用する場合にはパスワードの認証で使うと思います。そうすると、パスワードの盗用のリスク等が発生しますが、ローカル5Gでは認証はSIM認証によって行われることになっていますので、認証やセキュリティ面で管理運用上のリスクは低いといえます。
それから(第三として)、必要な機能に特化してカスタマイズ可能であることが挙げられます。これは後ほど説明をしますが、例えば公衆網の5Gではダウンリンクの帯域に最適化されています。しかし、ローカル5Gのユースケース、特に監視カメラあるいは遠隔制御といった場面では、高精細な映像をアップリンクで使っていくのですが、端末から基地局へ向けて、つまりクラウドに向けてデータを多く送っていくといった使われ方が多くあります。したがって、アップリンクの帯域を非常に...