●情報技術で得られるデータをいかに活用できるか
―― モノの考え方については、前回の国単位でなくて地域で見ていくというやり方もそうですし、富裕層については、世界の富裕層のマップで見ていくというところが、全然今までと違うところなのですね。
柳川 そうですね。これもポイントが2つあります。1つ目ですが、われわれは、例えば1980年代に比べると圧倒的にグローバル化した社会の中で生きているので、国単位で考えることの限界というのが、30年前とは相当違ってしまっているということです。
―― そうでしょうね。
柳川 その実態を考えないといけないと思います。おっしゃるような世界の富裕層の人たちや、富裕層に限らず、世界でアクティブに働いている人は、場合によると住んでいる地域がグローバルに3つ4つあって、それぞれの国で所得を稼いでいるというような人がいっぱいいます。そんな実態を踏まえると、国単位で考えることの限界というのは、(30年前とは)相当違っているということが1つです。
もう1つは、これもテクノロジーの発展で、そういうグローバルな動きだとか、あるいは地域単位の動きだとかということが分かるようになってきたので、結局、先ほどお話ししたことと少し関係するのですけれども、昔は、統計は国単位でしか取れなくて、その国単位の統計を見て、なんとなく100人の中で70人の人たちがこの薬が効いたからということと同じような意味で、日本という塊で何が起こっているのかくらいしか分からなかったのです。
―― なるほど。ぼやんとした(話だ)と。
柳川 はい。ぼやんとした話だから、そこしか分からなかったのです。
ところが、だんだんとこれだけいろいろなデータが集まるようになり、細かい、いわゆるセミマクロというか、本当のマクロではなくて、もう少し細かい地域単位だったり、いろいろなことが分かるだけのデータが手に入るようになりました。そこを細かく見ていって、もう少しきめの細かい対応をしていく必要が出てきた。そういうときには、日本という枠組みよりはもう少し世界を見ながら(ということ。つまり)やや矛盾しているように聞こえるかもしれませんけれども、日本ではなくて地域の単位で見ていく。でも地域の単位でグローバル全体を見ていく。そういうことです。
―― なるほど。
柳川 そういう視点が可能になってきたし、必要になってきて...