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誤解された『タテ社会の人間関係』…日本社会の本質に迫る

『タテ社会の人間関係』と文明論(1)誤解を招いた「タテ社会」の定義

概要・テキスト
『タテ社会の人間関係』(中根千枝著、講談社現代新書)
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『タテ社会の人間関係』は戦後日本の社会構造を的確に分析した社会人類学者・中根千枝氏の著書で、当時ベストセラーとして大変注目を集めた名著である。日本を「タテ社会」と定義して鋭い視点で切り込んでいるのだが、その定義には誤解も生じているという。いったいどういうことなのか。日本の「タテ社会」の対極にあるインドのヨコ社会についての考察も交えながら、この本を今、読み解く現代的意義について、與那覇潤氏と呉座勇一氏に語っていただく。(全8話中第1話)
時間:14:50
収録日:2024/05/27
追加日:2024/08/08
≪全文≫

●誤解を招いた「タテ社会」という表現


―― 皆さま、こんにちは。本日は與那覇潤先生と呉座勇一先生に、こちらの中根千枝さんの『タテ社会の人間関係』にまつわる講義をお願いしたいと思います。両先生、どうぞよろしくお願いいたします。

呉座・與那覇 よろしくお願いいたします。

―― ちょうど両先生が、こちらの『教養としての文明論』という本をご執筆されたというところでございまして、こちらはいろいろな論者の方々の文明論を集めた本ということですね。

呉座 そうですね。かなり古典的な文明論ですね。

與那覇 戦後日本を代表する知識人の書いた、そのようなスケールの大きな、1つの文明、あるいは複数の文明を分析しているような、往年の名著を、今の2020年代に歴史を研究している者のセンスで読み解いていくという感じのコンセプトの対談集になっています。

―― この本でどういう文明論が取り上げられたかと言いますと、梅棹忠夫氏の『文明の生態史観』、それから宮崎市定氏の『東洋的近世』、さらに井筒俊彦氏の『イスラーム文化』、高坂正堯氏の『文明が衰亡するとき』、それから丸谷才一氏の『忠臣蔵とは何か』と、これらの本を取り上げて、現代的意義とその時代的な意味を、この両面から読み解いていかれたと。

與那覇 そういうことですね。その本がどういう文脈で戦後書かれ、いつごろの時期に書かれたのかということをまずは押さえつつ、でも、「ああ、昔の話だね」ではなく、ここに実は今も通じる、例えばイスラムであればイスラムの本質が描かれているのではないかとか、ここは改定が必要かもしれないけれど、ここは今読んでも面白いのではないかということを、2人で議論しているという作品になっています。

―― 今回は、ある意味でそれの延長戦的な…。

與那覇 スピンオフ的な(笑)。

呉座 実際、この本も候補に挙がっていたのです。この『タテ社会の人間関係』も対談で扱う本の候補には入っていて、どうしようかなと思ったのですが、いろいろあって入れなかったということです。

與那覇 今回は違う本を選んだわけなのですけれど、今日は貴重な機会をいただき、本来、本に入れても良かったかもしれない議論をこちらでさせていただけるということで、大変ありがたく、また楽しみにしていました。

―― 私もこの機会に改めて読ませていただいたのですけれど、これはちょうど196...
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