歴史的に考えるウクライナ問題とロシア
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
スターリン、ジェルジンスキーに遡るロシアの「負の伝統」
歴史的に考えるウクライナ問題とロシア(5)ロシア文明と「負の伝統」
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
プーチンの思想を育んだロシアはどのような風土なのか――ウクライナ問題とロシアを考えるとき、こうした問いが思い浮かぶのではないだろうか。旧ソ連時代、KGBに所属していた彼の行動や倫理がそこに根づいた可能性は高い。それはどのような組織だったのか。また、ロシア人の持つ文明観と国家観とは何か。講義終了後の質疑応答編。(全5話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:16分57秒
収録日:2022年5月24日
追加日:2022年8月4日
≪全文≫

●一党統治と恐怖政治を支えた恐るべきシステムと発想


―― 先生、どうもありがとうございました。

山内 どういたしまして。

―― このプーチンという人間を育てたのは、ソビエトの体制なのか。彼はノーメンクラトゥーラという階層なのか、KGB出身なのか。「ソビエトの体制が生み出した人」と見てよろしいのでしょうか。

山内 そう見ていいと思います。そのことは二つの要素から見えてきます。まぎれもなく一つの要素は、政治の実行や政治政策の実行のプロセスにおいて、暴力やテロ、粛清というものをためらわなかった点です。

 1917年の十月革命以降のソビエト国家、ソビエト連邦の体質には、GPU、その前は「チェーカー」といいますが、いずれもKGBや今日のFSBにつながる公安機構です。そこは刑法などの法の支配を超越する存在です。言い換えれば、検察庁や検察官あるいは刑事警察、これらの根拠になる刑法などを超越する官庁です。まさに「シロヴィキ」につながるような、超越官庁としての役割を持っていました。

 彼らの判断において法を超越するわけだから、為政者(独裁者)であればなおのことです。ちょうどスターリンがそうだったように、独裁者の意思により公安や秘密警察をおさえ、それらを統治の手段として、ある場合は権力闘争の手段としても使うわけです。

 そういう伝統が、KGBを経てFSBにつながっています。そして、その伝統としてフェリックス・ジェルジンスキーという人物がいました。現在のFSBの庁舎は「ルビャンカ」という場所にあります。ここは、ソ連時代にはジェルジンスキーの名を取って「ジェルジンスカヤ」と呼ばれていました。「鉄のフェリックス」と暗喩されたロシアにおけるチェーカー(秘密警察)の最初の長官が、フェリックス・ジェルジンスキーです。

 その名称は、ソ連時代を通して地下鉄の駅名にも使われていました。そこを通るたびにモスクワ市民たちはジェルジンスキーから取った「ジェルジンスカヤ」の名を聞き、「鉄のフェリックス」「秘密警察」「粛清」「テロ」などを連想せざるを得ない。そのような連想が毎日繰り返されて、恐怖が内在化して組み込まれるような社会に育ったのです。このような恐怖を統治手段として使う体制ですから、統治者は次々に代わって今日まで至っているとはいえ、ジェルジンスキーに始まる恐怖的な統治、共産党の重要な政治手段としての秘密警...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
紛争が絶えない世界~私たちは何ができるか(1)「戦争の世紀」から再び戦争の時代へ
再び戦争の時代へ――私たちは何を考え、どう動くべきか
小原雅博
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
日本を復活させる国家戦略(1)戦後の復興戦略と日本経済の凋落
「所得倍増」はなぜ成功したか…日本経済の回復のヒント
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(39)上野誠先生の万葉集講義と現代
【10min解説】万葉集に学ぶ「公務員倫理法」の大失敗?
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(6)ピョートル大帝の宗教改革
王座に乗った革命家・ピョートル大帝の「宗教改革」と、ソビエト時代のロシア正教の「弾圧」と「利用」の実情
上月豊久
「良き対話」とは?――哲学から考える(1)対話とは何か――会話・説教との違い
「良き対話」のヒントを哲学から考える…「対話」の大前提とは、そして「会話」「説教」「場回し」とは何が違うのか?
納富信留
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(1)キスカ島撤退作戦
5200人の将兵を救え…米軍も称賛した「キスカ島撤退作戦」の奇跡
門田隆将
チームパフォーマンスを高める心理的安全性(1)心理的安全性が注目される理由
なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る
青島未佳
『源氏物語』を味わう(3)形容詞からの楽しみ方
美しい形容詞の使い分け…『源氏物語』の表現を味わう
林望
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ロシア「内政・経済・外交」の真実(1)国民の支持を意識するプーチン政治
ウクライナ侵攻も支持率対策か…プーチン政治の実態に迫る
上月豊久
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎