歴史的に考えるウクライナ問題とロシア
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ユティニアヌスの腐敗がかすむほど深刻なプーチンの腐敗
歴史的に考えるウクライナ問題とロシア(4)大義なき戦争と独裁者の核恫喝
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ロシアでは兵士の年齢上限の撤廃によって兵力の不足を補おうとしている。しかし、実際には戦死したにもかかわらず、軍曹や曹長などがいつまでも生きているという事態が生じている可能性がある。そうなると、軍隊では階級と昇進が組織の原動力であるため、そうしたポストがふさがっているということになり、必要な人員補充がなされず、作戦に支障をきたす。これは、核恫喝とともに大変由々しき問題である。(全5話中第4話)
時間:15分25秒
収録日:2022年5月24日
追加日:2022年7月28日
≪全文≫

●ユティニアヌスの腐敗以上に深刻なプーチンとロシア軍の関係


 皆さん、こんにちは。

 前回は『真空地帯』についてお話ししましたが、考えてみれば野間宏の『真空地帯』に出てくる経理部や連隊の経理班などは、プーチン氏が統括するロシアの軍隊の腐敗からすれば、まだかわいいものであったということになります。

 そして歴史的に学んだ場合、私などがすぐに連想したのは、東ローマ帝国(ビザンツ)の皇帝ユスティニアヌス時代の不正です。今回はこのお話から始めますが、それもプーチン氏の23兆円ともささやかれている腐敗と比べ、国家の財源の“単位”を考えた場合、まだまだユスティニアヌスの腐敗もかわいいものになります。すなわち野間宏が描いた帝国陸軍の腐敗やビザンツ帝国のユスティニアヌスの腐敗というものは、全くプーチン氏の足元にも及ばないということに驚きを感じざるを得ないのです。

 6世紀のビザンツ帝国には帝国会計官がいました。あたかも会計検査員のように厳格に収入支出を監査するような官職を連想しがちですが、これはそうではありません。ビザンツ帝国の会計官たちは、戦死した兵員や除隊した兵員たちの後を埋めず、埋めたかのように欠員を実員扱いにして、その分の給料や食費・被服費などを変わらずに取りました。

 実員がいないわけだから、その分は全て浮きます。浮いた金をどうするか。もちろん着服するのですが、彼らは全てを自分たちのものにはしないで、むしろ蓄財して蓄積したお金をユスティニアヌス皇帝に献上していく。皇帝に貢納して、これは皇帝への貢納だから正義だと信じていたところが救われず、また問題であるわけです。

 こうなると、まさにプーチン氏とロシア軍との関係に似てきます。ユスティニアヌスの軍隊は、数の上ではいることになっている兵員が、いない。そして、数の上ではあることになっている武器が、ない。そのため実際に軍を動員し作戦に出ると、その数字に見合うような部隊編成にはなっていない、あるいは武器を持っていない。そのようなことが起きるから、実際の作戦において敗北したり失敗したりするという当然の事態が生じるということです。


●昇進の望みなく、60歳でも兵役に駆り出されるロシア兵


 また、戦死したにもかかわらず兵員ポストがふさがっているということは、軍曹がいつまでも生きて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治