歴史的に考えるウクライナ問題とロシア
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20世紀以降、世界史を転換させたロシアによる四つの大事件
歴史的に考えるウクライナ問題とロシア(2)近現代ロシアの「正負の教訓」
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
政治家プーチン氏が歴史家として祖国を語るとき、そこにはロシア国民が共有するいくつもの体験や印象が投影される。ロシアの近現代は、日露戦争に次ぐ革命という負の体験からの出発である。ユーラシアの理想を掲げ、軍事行動にやすやすと移行するプーチン氏の現在は、フィンランドとの冬戦争時のスターリンの姿に重なる。(全5話中第2話)
時間:14分27秒
収録日:2022年5月24日
追加日:2022年7月14日
≪全文≫

●政治家としてのプーチン氏が歴史や文明論を語るとき


 皆さんこんにちは。

 政治家としてのプーチン氏、あるいは知識人としてのプーチン氏、彼は歴史家としてのプーチン氏として語ることがあります。しかし、政治家としてのプーチン氏が、文明論を語り歴史を語るプーチン氏と重なったときには、ある種の危険性、特に軍事的行動に関する発言がなされ、実現された場合、その軍事行動の正当性や違法性をどのように世界に対して弁明するのかという問題が、当然に生じるわけです。

 ところが、プーチン大統領はこの点に関しては実に寡黙です。彼は今回のこの戦争について(そもそも戦争という名称を使っていないのですが)、こういう一方的な侵略、戦争の正当性、違法性の如何について、世界に対して語ることは全くないのです。

 国連安保理(国連安全保障理事会)として、本来であれば世界平和を担保し、紛争を除去し、起こり得る戦争や不安定を未然に防ぐ義務を負っていますが、しかしその安保理の常任理事国のロシアが毎回やっていることとしては、拒否権の行使や自らの戦争責任の否定に終始しているのが現実です。

 ヨーロッパやアジアの区分も違いも超越した独特なユーラシア国家として、文明論的な使命を彼が持つのは自由です。しかし、そういう使命を持つからといって、それを軍事的に達成しようということになれば、話は全く別ものになります。これは平和論、あるいは安全保障論の観点からして、まことに由々しいことです。


●ロシアが20世紀以降に経験した四つの転換点


山内 ここで20世紀以降ロシアの経験した、世界史を大きく転換させることになった四つの事件、四つの大きな変化について、今回のウクライナ侵攻との関連で少し触れてみたいと思います。

 その第一は、ロシアが1904年から1905年にかけて行った日露戦争であり、日露戦争における敗戦体験です。この体験は、その後の同じ時期の第一次ロシア革命に続きます。これによってロマノフ朝は大きく揺らぎ、1914年に始まった第一次世界大戦の途中における1917年の二つのロシア革命によってロマノフ朝のロシア帝国は解体します。それにかわって世界史で初めての社会主義国家としてのロシア(ソビエト連邦)が、史上初めて登場したということになります。

 第二は独ソ戦、すなわち世界史的には第二次世界大戦と呼ばれる大きな戦(いくさ)です...

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