原子力発電の戦争リスク
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
原発攻撃の被害範囲と対策…使用済燃料の乾式貯蔵が急務
原子力発電の戦争リスク(2)ウクライナ原発の被害状況と日本の対策
鈴木達治郎(長崎大学客員教授/NPO法人「ピースデポ」代表)
実際に原子力発電所が攻撃を受けると、どのような被害が発生するのか。ロシア・ウクライナ戦争の事例をもとに具体的なリスクの内容を解説しながら、原子力発電所の構造的な問題点を指摘する。また、原子炉本体だけでなく、その周辺施設やそれに関わる人員に及ぶ被害を見据え、国際社会、そして日本が取り組むべき課題と対策について提言する。(全2話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:17分26秒
収録日:2022年10月18日
追加日:2022年11月25日
≪全文≫

●リスクを高める原子炉の集中立地


―― それではロシア・ウクライナ戦争の事例で、戦争で原子力発電にどのような被害が起きるのかという具体的なお話をさらに詳しくしていただいてもよろしいでしょうか。

鈴木 分かりました。このスライドはウクライナ原発の地図です。実はまだ(2022年)3月の時点での地図なのですが、ザポロジェ原発の2基が動いていました。これは今(2022年10月時点)、全部止まっていますが、実はウクライナの国境に結構近いところにあります。チェルノブイリ原発は閉鎖中なのですが、ここも占拠されてしまったということになっており、国境の北側から近いのです。

 そういうことで、問題はザポロジェなのですが、原子力発電所が6基もあるのです。福島原発もそうでしたが、集中立地していると、原子力発電所の1基に深刻な事故が起こると、なかなか他の原子力発電所の制御が効かなくなってしまいます。それで連鎖的に炉心溶融事故が起こってしまうということもあるので、集中立地しているということは非常にリスクが高いということです。

―― 要するに、人間がもう入れなくなってしまってコントロールできなくなるということですね。

鈴木 そうです、建物に近づけなくなってしまいますので。950万キロワット級のものが6基あるのは、ヨーロッパで最大です。日本のことですが、実は新潟県の柏崎刈羽原発に820万キロワットのものが7基あるというのが世界最大です。福島原発も470万キロワットのものが6基ありましたし、フランスの原子力発電所6基もザポルジェ原発と同じようにかなり大きな規模です。

 規模が大きいということは、その分、中に入っている放射性物質の量も大きいということです。当時チェルノブイリ原発の10倍の深刻な事故が起きるかもしれないというニュースが流れましたが、規模にするとそれぐらいの放射性物質が中にあるということです。ということで、集中立地は怖いなと思います。


●原子力発電所の構造にみるロシアと日本の違い


鈴木 それから次に構造を見ていただきます。格納容器は1.5メートルから2メートルくらいの厚い鋼鉄の壁なので、一応、安全規制ではジェット機が墜落しても大丈夫だといわれているのですが、ここを...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治