キャッシュレス化の動きと日本での可能性
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
キャッシュレス化の大事なポイント…そのメリットとは?
キャッシュレス化の動きと日本での可能性
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
現在、キャッシュレス化が世界の大きな趨勢になっている。一方、日本は現金が好まれている国だといわれているが、キャッシュレス化の動きがどう進展していくのか、注目が集まっている。では、日本においてキャッシュレス化を進める上でポイントとなるのはどのようなことか。
時間:13分26秒
収録日:2018年10月2日
追加日:2018年11月15日
≪全文≫

●キャッシュレス化と日本の状況


 今回は、キャッシュレス化という動きがこれからどうなっていくのか、お話ししたいと思います。

 ご存じの方も多いと思いますが、特に中国などにおいて、キャッシュレス化の動きがかなり進んでいます。中国では、国の中でほとんど現金が使われない、そういった状況になってきているといわれています。このような動きは、中国だけではなく、北欧諸国でも進んでいます。いわゆる「QRコード決済」と呼ばれる、QRコードを使って支払いをして、現金を直接手渡ししないといった動きが、世界中の多くの国で広がっています。

 日本は、比較的現金が好まれる国だといわれていて、こういったキャッシュレス化の動きはまだあまり進んでいません。日本は今でも、日本銀行券やコインを使って、多くの人が現金支払いをしているという状況です。しかし、この状況がやはり、世界の趨勢に従って大きく変わってくるのではないかといわれています。それが、キャッシュレス化をめぐる現在の動きです。


●キャッシュレス化は決済に関わる社会的な費用の削減につながる


 なぜこのようなキャッシュレス化の動きをめぐる議論が出てきているのか。その裏側にあるのがやはり、現金を取り扱うことの社会的な費用がずいぶん大きいということです。ユーザーにとってはもちろん、現金で財布がかさばったり、硬貨が重かったり、そういう問題もあります。

 現金の取り扱いに関しては、例えばATMに現金を入れる作業だとか、あるいは各お店でお釣りが不足しないように両替をしておくなど、そういったことに実はかなり手間がかかっています。そこで、例えば、ネット上で決済がなされる、あるいは現金を使わないさまざまな形で決済がなされることによって、社会的な費用が相当低くなるのではないかといわれています。そういった背景からも、日本でもキャッシュレス化を進められないだろうかという議論が今、起こっています。


●さまざまな形態のキャッシュレス化が存在する


 ここで大事なポイントは、このキャッシュレス化には実はさまざまな形があるということです。例えば、中国ではQRコード決済がすごく普及したので、キャッシュレス化といえば、QRコード決済が比較的注目されていますが、今でも使われているものとしては、クレジットカードの支払いも、実は広い意味でのキャッシュレス化の一形態です。それ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保