今後の技術革新と企業経営
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
データを活用するには、目的を先に決めること
今後の技術革新と企業経営(2)データを活用するために
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
近年、ビッグデータが注目を浴びている。しかし、集めただけでは何も役に立たない。データの活用に不可欠なのは、経営する側がそれを使って何を行うのかという目的設定であると、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏は語る。(2018年4月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「今後の技術革新と企業経営」より、全8話中第2話)
時間:7分13秒
収録日:2018年4月25日
追加日:2018年8月5日
≪全文≫

●データビジネスには、それを支える国家戦略が重要


 ここから、データやAIの話をしていきます。ですが、先にこれに関連した重要な話をします。それは、少し経営の話から離れますが、データに関する国家戦略の重要性についてです。

 データビジネスが重要だという話は、皆さんもご存じだと思います。そして、データビジネスにおいては、それを支える政策や法律が重要になってきます。しかしながら日本では、その政策や法律が決定的に遅れています。例えば現在、データを収集しているのはGoogleやFacebookであり、データの帰属先はアメリカになっています。

 データに関して中国は何をしているかといえば、GoogleやFacebook、Uberなどを排除して、自国の中でこれらに近いような会社を作り、そこにデータをためさせています。

 ヨーロッパも、GoogleやFacebookなどにデータを全部持っていかれることに、非常な危機感を持っています。そこでヨーロッパは、競争政策などの枠組みの中で、データを個人に帰属させようとしています。データをユーザー個人のものとすることでヨーロッパに帰属させる、そういう戦略的な対応を取っています。

 このように、中国やヨーロッパはデータ収集に対する対応をしているのに、日本だけが具体的なレベルでは無策です。自由だといえば自由なのですが、いろいろな人に活動をさせて、活動していった人がデータを持っていけるような形になっています。

 しかし、情報やデータの蓄積に関しては、なかなか企業だけでできることではありません。法律や制度の整備を一緒に行っていく必要があります。そういう意味でデータに関する国家戦略が決定的に重要になるのですが、日本は今のところそうした動きが遅くなっています。

 前回、日本企業は動きが遅いということ、また、産業間の縦割り構造を超えるようなビジネスが必要だということをお話ししました。その話は、政府や規制や行政に関しても、全く同じように当てはまります。

 日本では、行政の動きや、法律の作成や改正への動きが遅いのです。また、監督官庁が縦割りであるため、業界をまたぐような動きに関しては、そうして何かが決まるようなことは難しい。これが今の実情です。このような実情を変えていくためには、行政の方もかなりの改革が必要だと思います。


●ビッグデータはそのままでは役に立たない


 技術革新と経...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
マザーテレサとの出会い
人生を変えたマザーテレサの言葉…あの人たちはキリストだ
上甲晃
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(5)ヒラリーの無念と日米の半導体問題
大統領選が10年早かったら…全盛期のヒラリーはすごすぎた
島田晴雄
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
日本の財政と金融問題の現状(1)財政赤字の何が問題か
日本の財政は本当に悪いのか?将来世代と金利の問題に迫る
木下康司
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二