フィンテックと金融革命
フィンテックベンチャーが金融ビジネス全体を大きく変える
フィンテックと金融革命(1)産業の垣根がなくなる日
経営ビジネス
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
今、話題の「フィンテック(FinTech)」とは何か。フィンテックベンチャーが経済や金融に与える影響とは。東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏が、経済学者の視点から分かりやすく解説する。第1話では、フィンテックの基本と全体像を把握する。(全5話中第1話)
時間:13分35秒
収録日:2016年10月17日
追加日:2016年12月25日
収録日:2016年10月17日
追加日:2016年12月25日
≪全文≫
●「ファイナンス」+「テクノロジー」=「フィンテック(FinTech)」
今日は、今話題になっているフィンテックについて、それがどのようなものか、経済や金融にどんな影響を与えるかを中心にお話しします。
フィンテックとは、文字通りファイナンスとテクノロジーの二つを合わせた造語です。「金融関係のビジネスが、テクノロジーの進歩によって大きく変わるのではないか。その変化で新しいビジネスチャンスも出てくるだろう」と、今、大いに話題になっているものです。
一見すると和製英語のように見えますが、実はれっきとした海外由来の英語で、海外でも使われています。このことからもよく分かる通り、日本だけでなく、世界的にも話題になっている言葉です。ただ、少しブームというか言葉のバブルのようになっていて、「フィンテックとは何か」という定義が人によっては曖昧で、言葉だけが独り歩きをしている状況でもあります。とはいえ、世界的にこれだけ大きな動きになっているということは、単なるブームや言葉だけのことではなく、やはりこの「フィンテック」という用語を通して、金融や世界全体の経済が大きく変わろうとしている点が、今注目されている大きなポイントです。
ということで、いろいろな使われ方をして、マスコミでも毎日のように「フィンテック」という言葉が躍り、かなり多義的に使われている用語ですが、ここで、「フィンテック」とはどのようなものか、私なりに理解している変化を整理しておきます。その際、遠い将来、長期的に見たときに大きな変化を起こしそうなことと、それほど長期ではなく比較的短期で変化が起こることとに分けて議論をしたいと思います。
それはなぜかというと、長期の話が実体経済を変えるにはやはり少し時間のかかる話で、場合によるとかなり不確実性も伴います。そのような話を今すぐ起こるかのように議論してしまうとやや困難が生じるからです。では遠い先の変化だけなのかというと、実は今すぐ、あるいは割と近い将来に大きく動きそうなこともたくさんあります。そのため、この2つを分けて考えようということです。
●目前のビジネスチャンスと中長期的な構造変化
割と近い将来、あるいは今現在起こっている変化では、やはり「フィンテックベンチャー」という言葉に代表されるように、多様なIT技術やAIなどの変化を通して金融分野にかなりのビジ...
●「ファイナンス」+「テクノロジー」=「フィンテック(FinTech)」
今日は、今話題になっているフィンテックについて、それがどのようなものか、経済や金融にどんな影響を与えるかを中心にお話しします。
フィンテックとは、文字通りファイナンスとテクノロジーの二つを合わせた造語です。「金融関係のビジネスが、テクノロジーの進歩によって大きく変わるのではないか。その変化で新しいビジネスチャンスも出てくるだろう」と、今、大いに話題になっているものです。
一見すると和製英語のように見えますが、実はれっきとした海外由来の英語で、海外でも使われています。このことからもよく分かる通り、日本だけでなく、世界的にも話題になっている言葉です。ただ、少しブームというか言葉のバブルのようになっていて、「フィンテックとは何か」という定義が人によっては曖昧で、言葉だけが独り歩きをしている状況でもあります。とはいえ、世界的にこれだけ大きな動きになっているということは、単なるブームや言葉だけのことではなく、やはりこの「フィンテック」という用語を通して、金融や世界全体の経済が大きく変わろうとしている点が、今注目されている大きなポイントです。
ということで、いろいろな使われ方をして、マスコミでも毎日のように「フィンテック」という言葉が躍り、かなり多義的に使われている用語ですが、ここで、「フィンテック」とはどのようなものか、私なりに理解している変化を整理しておきます。その際、遠い将来、長期的に見たときに大きな変化を起こしそうなことと、それほど長期ではなく比較的短期で変化が起こることとに分けて議論をしたいと思います。
それはなぜかというと、長期の話が実体経済を変えるにはやはり少し時間のかかる話で、場合によるとかなり不確実性も伴います。そのような話を今すぐ起こるかのように議論してしまうとやや困難が生じるからです。では遠い先の変化だけなのかというと、実は今すぐ、あるいは割と近い将来に大きく動きそうなこともたくさんあります。そのため、この2つを分けて考えようということです。
●目前のビジネスチャンスと中長期的な構造変化
割と近い将来、あるいは今現在起こっている変化では、やはり「フィンテックベンチャー」という言葉に代表されるように、多様なIT技術やAIなどの変化を通して金融分野にかなりのビジ...
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