●ブロックチェーンは、改ざんされない記録を安く残せる技術
最後には、ブロックチェーン技術の話をします。実は今、すごく注目されている技術です。
以前、日本でもブロックチェーンに関するイベントが開かれました。ダボス会議(世界経済フォーラム、スイスのダボスで開催)も、2017年にはAIがメイントピックだったのですが、2018年にはAIが影を潜めて、ブロックチェーンがメイントピックになりました。
ブロックチェーンは、ビットコインを支える基礎技術ではありますが、ご存じの通り、仮想通貨だけに使える技術ではありません。その技術は、さまざまなビジネスに使うことができます。
ブロックチェーン技術のポイントは、改ざんされない記録をネット上に残すことができ、そして、その記録を誰もが確認することができる、という点にあります。テクニカルな話をすれば、いろいろな暗号技術などを使います。
もちろん今でも、改ざんされない記録を残すことは可能です。例えば、全銀ネットでも改ざんはされません。ですが、従来、改ざんされない記録をどこかに残すためには通常、ものすごい設備投資が必要で、大きなセキュリティーコストがかかっていました。それに対して、ブロックチェーン技術は、非常に安いコストで、改ざんされない記録を残せます。そこにポイントがあるのです。ですから、この技術を生かすビジネスモデルがいろいろと出てくるはずです。
ただし現状に関していえば、ブロックチェーンはまだ発展途上の技術です。低コストで極めて安全なものを作ることはできるのですが、そうするとスピードが落ちてしまいます。逆にスピードを速くしようとすれば、安全性が欠如することになります。
●ブロックチェーンを用いたビジネスモデルはすでに登場している
このように、速くて安くて安全であるという、3拍子をそろえることはなかなか難しい。ここに今のところジレンマがあります。ですが、あまりスピードを要求されないような記録に関しては、安全で安いものを作ることができるので、とてもいいビジネスモデルだといわれています。
私がよく例に出すのは、イギリスで実際に行われている、ダイアモンドの記録をブロックチェーン上で残しておくというビジネスです。ダイアモンドには、まがいものがいっぱいあります。そこで鑑定書などを付けるのですが、それでもまがいものが多いという状況です。
そこで、ダイアモンドがどこで採掘されて、どういうルートをたどってきたのかを、ブロックチェーン上に全部残しておきます。そうすれば、例えば手元にあるダイアモンドが偽物ではなく、どこで発掘されたものかという来歴が分かります。これによって、まがいものが格段に減って、安全な取引ができるようになります。
これは、すごく面白いアイデアだと思います。これをイギリスのベンチャーの会社が、実際にビジネスとして行っています。そして、同じように、いろいろなところでブロックチェーンを用いた新しいビジネスモデルが立ち上がりつつあります。
●ブロックチェーンは登記や行政関係の記録にも有益
もう一つ、ビジネスに加えて、行政関係の記録にも、実はブロックチェーンが相当使えるだろうといわれています。行政関係の記録は安く、そして安全に記録を残すことが大事だからです。
また、土地の登記は、ブロックチェーンが役立つ典型的なものだといわれています。現状では、登記簿に正確な記録を残しておくことは難しいのです。そこで、登記に関する記録をブロックチェーン上に残しておくことは、とてもいいことだと思います。土地の登記の記録は、そこまでスピードが要求されません。ですから、現状のブロックチェーンでも十分だということです。なかなか実用化されていないのですが、やがて実用化されるだろうといわれているのは、こういう利点があるからです。
このようにブロックチェーンを用いたビジネスモデルが出てくるだろうといわれている中で、エストニアという国は、政府が実際にブロックチェーンをかなり活用しています。これは、ビジネスモデルとしても、いろいろなものがこれから出てくるだろうといわれており、実際にいろいろなベンチャーの会社があります。
●ブロックチェーンはスマートコントラクトを可能にする
このように、ブロックチェーンを用いて取引の記録などを残すビジネスモデルには、大きな魅力があります。ですが、今までしてきた話は、実はブロックチェーン技術のすごさの一断面にすぎません。一断面として、確かにコストは安くなるのですが、それだけだとあまりすごい感じはしません。つまり、それで世の中が変わりそうな感じはしないということです。
ブロックチェーンに関して世の中を大きく変えるだろうといわれているのは、実は「スマートコン...