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仮想通貨が本当の「通貨」にならない理由

今後の技術革新と企業経営(6)仮想通貨とフィンテック

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏が、仮想通貨とフィンテックについて解説する。仮想通貨は、画期的な技術革新・経済現象だが、供給量をコントロールできないため、通貨にはなり得ない。フィンテックとして注目される中国のキャッシュレス化は、金融と他の産業の新たな連携を生み出すところにポイントがある。(2018年4月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「今後の技術革新と企業経営」より、全8話中第6話)
≪全文≫

●技術革新が貨幣や決済に関する急速な動きを生んでいる


 ここからは、ブロックチェーンフィンテック、ICO(Initial Coin Offering)などの話に移ります。今回は仮想通貨やICO、そしてフィンテックのお話をしまして、次回ブロックチェーンのお話をします。

 まず貨幣や決済に関してですが、急速な動きがあります。例えば、ビットコインの急激な価格上昇や、中国でキャッシュレス化が進んでいることが挙げられます。それから、ICOが急速に進展しましたが、今は急速にしぼみつつあります。

 ICOとは、仮想通貨を発行して資金を調達することです。一時期起こった現象ですが、ベンチャーなどがIPO(新規公開株の発行)をしなくても、ICOでコインを発行すると、何百億というお金が集まる、ということがありました。

 これは、実際にプロダクトは何もなく、まだアイデアのレベルにしかない人のもとに、何百億というお金が集まるという、不思議な現象でした。ですが、これに対してはいろいろな規制が入りつつあって、急速にしぼみつつあります。


●仮想通貨は通貨にはなり得ない


 では仮想通貨の話をします。仮想通貨は、単なる電子データだったものが、あれだけの価値を持つようになりました。これは、技術革新としてはすごいことです。さらには、経済現象としても、非常に画期的なことだったと思います。

 この変化は、おそらく元には戻らないでしょう。これからもずっと残り続けるだろうと思います。ただし、中央銀行の人たちが言っていますが、「仮想通貨」という言葉は、ややミスリーディングだということです。

 現在の仮想通貨、少なくともブロックチェーンの技術を使った仮想通貨は、実際には通貨にはなり得ません。これから発展していっても、通貨として使われるようにはなりません。すごく極端な状況下、例えば非常に政情不安な国で、自国通貨がものすごく不安定な場合、取引に使われることはあるかもしれません。あるいは、国際送金にすごくコストがかかる場合、コストが低いビットコインでの国際送金を行うことがあるかもしれません。

 ですが、それは特定の条件下で使われるというだけであって、本当の意味での通貨にはなりません。そこで、仮想通貨という呼び方ではなく、「仮想資産」あるいは「暗号資産」という呼び方をしようというのが、世界的なコンセンサスになっています。英語でいえば...
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