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なぜ今、中央銀行デジタル通貨への動きが進んでいるのか

中央銀行デジタル通貨と貨幣のない世界(1)電子マネーとどう違うのか

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
日本銀行は、2020年10月に「中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する取り組み方針」を公表した。翌21年4月からは実証実験も開始されている。現時点(2021年6月)では日本銀行がデジタル通貨を発行する計画はないというが、今後の見通しはどうなのか。貨幣のない世界では何がどう変わっていくのかを含めて話を聞いていく。(全5話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:23
収録日:2021/04/28
追加日:2021/06/17
≪全文≫

●中央銀行デジタル通貨の話と仮想通貨の話は別物


―― 皆さま、こんにちは。本日は柳川範之先生に、中央銀行デジタル通貨についてお話をうかがってまいります。柳川先生、どうぞよろしくお願いいたします。

柳川 よろしくお願いします。

―― 今回は中央銀行デジタル通貨ということなのですが、デジタル通貨といってもいろいろございます。私どもも最近では、公共交通を利用するときは、SuicaやPasmoなど首都圏の交通系ICカードが中心ですし、iDカードなどを用いて電子決済を行う人も増えています。ところが、ここにきて中央銀行デジタル通貨の話が出てきたので、いったいこれはどういうものなのか、私も含めてよく分からない方が多いのではないかと思います。これは具体的にどういう意味があるものなのかを、まずお話しいただきたいと思います。

柳川 そうですね。中央銀行デジタル通貨というものが、今われわれの使っているSuicaやPasmoとどう違うのかは、多くの人がなんとなく疑問に思っていることだと思います。そういう話をきちんと考えていくためにも、もう少し幅広い意味でのデジタル通貨に関して、どのような用語が語られていて、それぞれがどう違うのかということを少し整理したほうが、皆さんの理解が深まると思いますので、その話を先にいたします。

 デジタル通貨の話について新聞などがよく話題にする単語は「仮想通貨」です。いわゆる「ビットコイン」というもの。この番組を見ていらっしゃる方がビットコインをよく知っていらっしゃるか、名前だけは聞いたことがあるという感じなのかは分かれると思うのですが、こういう仮想通貨の話が一つ、あります。

 それから、ブロックチェーンという話と、中央銀行デジタル通貨のような話。この三つぐらいが、割と混同しやすいようで、また全然バラバラではなく、つながりながら使われている用語なので、このあたりを先に整理しておいたほうが、皆さんの理解が深まるかと思います。

 まず、こういう話で一番目立つのが、ビットコインです。これは「仮想通貨」と呼ばれてきましたが、やや実態に合わないのではないかということで、少し前に「暗号資産」という言葉を使うように変わりました。ですので、仮想通貨と暗号資産は同じものと考えていただくといいでしょう。

 ビットコインは、民間の側がデジタル技術を使って貨幣「のようなもの」をつくりだした...
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