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デジタル通貨によって独自の経済圏が形成されるのか

中央銀行デジタル通貨と貨幣のない世界(5)民間型デジタル通貨の可能性と影響

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
民間企業が発行するデジタル通貨が国の脅威になるといっても、通貨単位を変えないシステムの場合は、中央銀行のコントロール下に置くことができる。しかし、独自の通貨が発行されるとなると、それに伴って独自の経済圏が形成され、日本円とはまったく無関係の世界で生きることになるかもしれない。現在のようにオンライン決済が普及した世界では、電子マネーによる経済圏の形成が十分射程に入ってきた。いずれにしても、デジタル通貨によって通貨の持つ意味が変わってくるということだ。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14:00
収録日:2021/04/28
追加日:2021/07/01
タグ:
≪全文≫

●民間型のデジタル通貨と通貨単位の問題


―― 中国では、アリババが発行したアリペイをめぐって、アリババのジャック・マー氏が弾圧されたような話も流れてきています。中央銀行デジタル通貨のようなものと民間型のデジタル通貨のようなものがあり、国家としては、民間型が増えてくると金融政策等々もなかなかやりづらいことになるのだろうと思うのですが、政府はどう判断していくものなのでしょうか。

柳川 まず区別をしたほうがいいのは、どういう通貨単位を使うかということです。前半ではPasmoやSuicaを例に出しましたが、ああいうものの通貨単位は基本的に日本円です。

 そのもとで取引をしているとすると、日本円である以上、デジタル通貨を出し入れして増減する裏側に日本円の資産が担保としていないといけないわけです。それが100パーセントリンクしているかどうかは別にして、ある程度リンクしているとすると、中央銀行が日本円をコントロールしている限りは、各民間企業が発行するデジタル通貨の量もおよそコントロールできるという形になるということです。

 だから、例えば100万円の電子マネーを発行しようとすると、手元にキャッシュか中央銀行のアカウントか何か、中央銀行デジタル通貨であれば中央銀行デジタル通貨の形で100万円持っていなければ発行できない、そういう形でコントロールができます。

 あるいは今のプリペイドカードみたいな話では、預託金が半分あればいい。つまり50万円のキャッシュなり、中央銀行のアカウントを持っていないといけないということ。この場合は倍額発行できるわけですが、それでも勝手にできるわけではないという意味で、中央銀行のコントロール下にあります。そういうことなので、あまり今と変わらない。

 変わり得るとすると、さっき申し上げたように、金融機関外の人がマネーに近いものを発行することをどう考えるかということにすぎないです。


●独自の通貨単位が日本円と無関係の世界をつくりだす


柳川 その一方、独自の単位で通貨を発行するとなると、これは状況がだいぶ変わってくる話です。それは、独自の通貨圏を形成するかもしれない。細かい話でいけば、どれぐらいその裏側に資産を持っているのか。何の資産を持っているのか。例えば「Libra」という独自の単位を出したとすると、日本円でどれだけの価値を持ち、ドルだとどうなるのかといったこ...
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