中央銀行デジタル通貨と貨幣のない世界
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もし給与振込が直接、電子マネーになったらどうなるか
中央銀行デジタル通貨と貨幣のない世界(3)電子マネーによる給与振込
政治と経済
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
給与振込を直接、電子マネーにしようという話がある。これは金融の世界にかなり大きなインパクトを与える可能性がある。もしも日銀券が使われないとすると、モノの取引、支払いの形が根本から変わってくるからだ。いったいどういうことなのか。(全5話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:7分02秒
収録日:2021年4月28日
追加日:2021年6月24日
≪全文≫

●中央銀行が直接電子マネーを全て発行するのは現実的ではない


―― たしかに、今使っている人も多い交通系ICカードやiDカードなどと本当に変わらない感じになりますね。ユーザー側からすると、それほど変わらない世界になるということでしょうか。

柳川 変わらない世界のほうが方向性としては望ましいのではないかと考えている人のほうが多いのだと思います。ただ、技術的にはそれだけが選択肢ではない。前回申し上げたように、中間を通さないで中央銀行が直接電子マネーを発行する、それで全て取引してもらうということも、少なくとも技術的選択肢としてはあり得ます。

 ただ、これは私の個人的な意見ですが、そうなってしまうといろいろな技術革新のようなものが起こりにくいのではないか。やはり民間事業者がいろいろな工夫をするから、電子マネーの使い勝手のよさなどいろいろなものをやっていく。できるだけ個人の消費者に近い部分は、そういう人たちに工夫をさせたほうがいいだろうと思います。

 それから、直接発行にした場合、間接金融のあり方が今までと違ったものになってしまうので、そこをどう考えるかということ。それから、個人のアカウントを中央銀行が管理するとすれば、そこのセキュリティ・レベルも考えないといけないので、そこをどう考えるかということ。

 このようにいろいろ課題があるので、人によって意見は違うかもしれませんが、私としては全ての電子マネーを中央銀行発行に置き換えるというのは現実的ではないのではないか、と思っているということです。


●電子マネーによる給与振込になることのインパクト


柳川 その上で、今の状況と大きく変わってくる可能性があるのか、ということでいくと、今少し議論されているのは給与振込についてです。今のやり方は、銀行口座にまず入れるか、あるいは現金でもらうわけですが、給与振込を直接電子マネーで入れるようにしようという話があります。

 これは、今の中央銀行デジタル通貨や電子マネーにとってかなりインパクトを与える可能性があります。こうすると、全てが電子マネーで完結してしまうからです。

 一番分かりやすいのは給与を現金で受け取る場合、そこで日銀券を得て、日銀券を得た人がチャージをしに行くことになるわけです。もしも日銀券が使われないとすると、チャージした金額分の電子マネーが貯まります。そうする...

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