中央銀行デジタル通貨と貨幣のない世界
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
リテール型よりホールセール型のほうが現実的
中央銀行デジタル通貨と貨幣のない世界(2)間接発行型の中央銀行デジタル通貨
政治と経済
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
日銀が直接電子マネーを発行するとなると、個人口座の管理が日銀の仕事になる。これは金融機関や間接金融のあり方を根幹から変える可能性があり、「それでいいのか」という話になる。そこで現実的な方向性として一番有力なのは「ホールセール型」で、中央銀行デジタル通貨を間接型にして、中央銀行は直接的には個人のアカウントを管理しないという形だ。(全5話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分30秒
収録日:2021年4月28日
追加日:2021年6月17日
≪全文≫

●金融機関や間接金融のあり方を根幹から変える可能性もある


―― 具体的なイメージの話なのですが、SuicaやPasmoといった交通系のものであれば現金を入れてチャージすることもできるし、クレジットと紐付けてオートチャージ(他のカードの場合はクレジットカード機能)という形もあります。今のお話のように口座が開けない、カードが持てない人向けだとすると、仕組みとしてはどうなのですか。日銀の発行したものは、やはりどこかの場所へ行ってチャージをして使うようなイメージのものなのでしょうか。

柳川 これをどういうイメージのものにするかはまだ決まっておらず、どういうふうにできるのかということすら、まだよく分かっていないというのが正直なところです。

 個々人が中央銀行デジタル通貨を使えるようになるといったときに、どういう形のものにするかについてはいろいろ模索がされています。言葉は相当踊っているのですが、それをどういう仕組みの中で本当に使えるようにしていくかというのは、大きな課題です。

 中央銀行デジタル通貨と呼ばれているものの中にも実はいろいろなものがある。一つは今のようにそれぞれの人がカードを持って、しかもその中に直接日銀券に代わる日本円がチャージされている。このような形が一番分かりやすいと思います。

 では、この後どうなるかというと、チャージしているアカウントが必要になるわけです。そうすると、チャージしているアカウントを日本銀行が直接管理するという形にならざるをえない。

 日本銀行が、個々人のチャージ(記録)している口座を持つということになると、これは世界中の中央銀行がやっている仕組みとはまったく違っています。

 世界中で中央銀行は、銀行のアカウントは管理していますが、個人の口座管理などしておらず、チャージ・アカウントはしていないわけです。そこで、個人の口座を全部中央銀行が管理するような形が、本当にできるのか、あるいは望ましいのか、ということになります。

 そこでは、技術的な観点だけではなくて、もしそんなことをすると銀行の役割やクレジット会社の役割もまったく変わってくることになる。いわゆる間接金融というものの構造が、全然違ってきてしまうわけです。

 そうなると、これは金融機関のあり方や間接金融のあり方を根幹から変える可能性もあり、「それでいいのか」という話になってい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」
台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件
テンミニッツ・アカデミー編集部
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(2)再生可能エネルギーの可能性と経済性
やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本
小宮山宏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(2)50歳からの目標
伊能忠敬の生き方に学ぶ「50歳からの目標」とは?
童門冬二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
核DNAからさぐる日本のルーツ(2)原人・旧人・新人
原人・旧人・新人は長い年月をかけて分岐と混血を重ねた
斎藤成也