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中央銀行デジタル通貨が「通貨圏」を広げていく可能性

中央銀行デジタル通貨と貨幣のない世界(4)世界的な議論になっている理由

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
2020年にはバハマとカンボジアでデジタル通貨が発行された。2021年4月に中国が実証実験を開始したが、世界の中央銀行がデジタル通貨の開発に注力していることは間違いない。その裏には、海外送金の利便性向上とともに、マネーロンダリング対策へのコストの問題なども指摘されている。一方、中央銀行デジタル通貨によって「通貨圏」を広げていくという大きな可能性も考えられている。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11:58
収録日:2021/04/28
追加日:2021/06/24
タグ:
≪全文≫

●各国はなぜ中央銀行デジタル通貨に熱意を燃やすのか


―― ここでもう一つ、先生にお聞きしたいのは、(デジタル通貨に関して)今、中国をはじめとして各国が熱心に取り組みをしているというところです。各国が取り組んでいる意味は、どういう点にあるのでしょうか。

柳川 はい。ここまで順番に話してきましたが、今のところ個人のレベルでは、すでに発行されている電子マネーと比べて、今後発行される中央銀行デジタル通貨によってあまり大きな変化はないだろう、という話をしました。

 変わる構造というのは、一つはどんな金融機関を通してデジタル通貨が発行されるかということで、ホールセール型にするかリテール型にするか、あるいは直接金融機関を通さずに給与振込のようなことができるかということです。

 それにより金融仲介業の競争環境のようなことが変わるのが実質であって、その結果、もしかするとマネーサプライの定義の仕方が変わるかもしれない。そこに、実は中央銀行デジタル通貨がどういう形で発行されるかのインパクトがあるのだ、という話をしてきました。

 これ以外にも、中央銀行デジタル通貨をどうするかによって変わってくる要素は、いくつかあります。大きくは二つだと思うのですが、その一つが海外送金です。

 海外送金については今、圧倒的に時間や手数料がかかるという話になっています。実はオンライン上で決済すれば、簡単にメールが届くぐらいなのだから、メール添付などの方法を使えば海外にも簡単にお金が送れるではないかと言われています。

 こういうイメージからすると、中央銀行デジタル通貨を使った形で海外送金をできるようにすれば、もっと利便性が高くて、もっとスピードをもって、もっとコストを安くできるのではないかということが言われています。


●海外送金に便利というメリットとマネーロンダリング対策


柳川 デジタル通貨についての議論では、ディテールの個人の使い勝手のよさとは別に、海外送金に非常に便利に使えるのではないかと言われています。

 これはその通りで、大きく状況を変える一つの要因は、海外送金をもっと利便性の高い形にすることです。今日は細かい話はしませんが、(第1話でお話しした)ブロックチェーンをうまく使って送金ができるようにすると、便利になるのではないかということがあります。

 このために、中央銀行デジ...
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