コロナ禍の世界経済とその行方
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
コロナ発生から半年以上、良いニュースと悪いニュースとは
コロナ禍の世界経済とその行方(1)コロナ危機と二つのニュース
伊藤元重(東京大学名誉教授)
コロナ禍において世界の中央銀行や各国政府は、人々の生活を支えるため必死の努力をしてきた。こうした状況が続く中、世界経済にとって良いニュースと悪いニュースが1つずつあると伊藤氏は言う。それぞれどのようなことなのか。コロナ危機がマクロ経済に及ぼす影響について解説する。(全2話中第1話)
時間:7分13秒
収録日:2020年10月27日
追加日:2020年12月7日
≪全文≫

●コロナ危機は「吹雪みたいなもの」で、収まるまで待つしかない


 学習院大学の伊藤です。今日はコロナ危機がマクロ経済にどういう影響を及ぼし得るのかということについて、いくつか私の視点を提供させていただきたいと思っています。

 コロナが世界的に急速にひろがって、マーケットが大きく崩れたのが今年2020年の3月だったわけです。その時期のひと月くらい後だったかもしれませんが、3月か4月にもとのアメリカの中央銀行(フェデラル・リザーブ)の議長でベン・バーナンキという有名な経済学者がいるのですが、CNBCという経済テレビ番組の中でインタビューを受けて、今回のコロナ危機をどう見ているのか、と質問されたわけです。

 彼の答えはこうでした。例えば、石油ショックのような形で石油価格が急騰することによって起きた経済危機とも違うし、あるいは2008年のリーマンショックのようないわゆる世界的な金融危機とも違う。例えていうならば今の危機は「スノーストーム」、いわば吹雪みたいなものだ、という表現を使ったわけです。

 この「吹雪みたいなものだ」というのは、なかなか比喩としてみたら奥が深いものです。要するにスノーストームが吹き荒れているわけで、外に出ていったら命が危険になってしまう。皆、ロックダウンするしかない、ということです。ロックダウンすると当然、経済活動は停止しますし、特に貧困層を中心に命の危険にさらされることがあるかもしれない。したがって、政府はそこを一生懸命支援しなければいけない。

 日本でいえば、国民に一律10万円を配るとか、あるいは雇用調整助成金で企業が人々に給料を払い続けられるように、政府が支援するとか。または中小企業を中心に、資金繰りが厳しくなって企業が倒産することがないように、政府あるいは金融機関がそれを一生懸命支えるといった政策になるわけです。そういう意味で非常な危機なので危機対応が必要だ、というメッセージだったと思います。

 もう1つ大きな意味がありそうなのは、残念なのですがコロナという現象を抑え込むことはなかなか難しい。ちょっと吹雪が大きくなったときは吹雪を抑え込むことは難しいから、とにかく吹雪が収まるまで待つしかない、というわけで、ここがなかなか難しいところです。


●金融危機を起こさぬよう必死の努力を続ける世界の中央銀行や政府


 この比喩にはいくつか大きな誤解を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
MAGA内戦、DSAの台頭…過激化が完了した米国の現在地
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(2)プロテスタントと「予定説」
カトリックとプロテスタントの違いは?「救済予定説」とは?
橋爪大三郎
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理