●危機は経済の変化を加速させる
「危機は経済を大きく変える」ということは皆が理解しているのだろうと思います。ただ、ある雑誌に出ていた非常に面白い言い方があって、1回の危機は経済を変えるけれども、2回の危機はもっと変える、と。
当たり前といえば当たり前なのですが、これは何を言っているのかというと、今回のコロナの危機もそうなのですが、コロナ危機によってコロナ前にはなかったことがいろいろ出てくるという意味で、コロナは経済を変える、社会を変える、という面ももちろんあります。例えば、ソーシャルディスタンスを取るとか、そういうことがあるのですが、コロナの前から見えているいろいろな変化の多くは、コロナの危機によってもっと加速するという面のほうが非常に大きいのだろうと思います。
●2回の危機が日本に決定的な変化をもたらした
したがって、2回の危機の中で起きている変化は非常に大事だということです。ちょっと過去の例でいうと、1973年に第一次石油ショックがありました。中東戦争をきっかけにして石油価格が高騰し、これが日本経済に打撃を与えたわけです。特に大きいのは、それ以前高度経済成長の中で重厚長大産業だった鉄鋼だとか石油化学などが構造不況産業になっていったこと。日本の産業構造が変わっていったわけです。
ただ、そうはいっても1973年の石油危機で、日本経済が完全に変わったわけではなくて、とどめをさしたのは、1979年の第二次石油ショックでした。イラン革命に端を発して石油価格がさらに上がったわけです。だから、2回の石油ショックによって完全に日本は高度経済成長、重厚長大の社会から新しい時代、軽薄短小の産業に変わっていくわけです。
もう1つ例を挙げると、1990年にバブルが崩壊しました。それまで不動産とか株価がずっと上がり続けている中で、ある種の経済であったわけですけれども、これが株がまず暴落し不動産が暴落することによって、日本は時代が変わってきたということを皆が感じ始めたわけです。
さはさりながら、それによって社会が全部急激に変わるわけではない。けれどもトドメを刺したのは、1997年の年末、年の後半に山一証券が倒産し、1998年にいわゆる金融危機が起こる。不良債権問題が一気に広がっていくわけです。ここでもうとどめをさした感じです。
ですから1990年のバブルの崩壊と1998年の金融危機を通...