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2021年、日本が目指すべきは自律分散協調型社会の実現

2021年頭所感-コロナ問題の克服と日本の未来に向けて-

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
3つの観点からお送りする2021年頭所感。具体的にはコロナ問題、世界および地球の問題、日本の未来の3つで、それぞれどんな点に注目し、どのように考えていけばいいのか、その指針が示されている。まずコロナ問題だが、コロナ禍において自殺者の増加という状況を踏まえ、経済活動を保ちつつ社会をコントロールすることが肝要で、カギはPCR検査の増強だと小宮山氏は説く。世界に目を向けると、アメリカの政権移行を契機にトランプ政権前のいわゆる「常態」に復することが期待される。一方、日本は菅政権に変わり、より実行性を伴った政策の推進で求められるところだが、目指すべきは自律分散協調型社会の実現である。
時間:12:42
収録日:2020/11/18
追加日:2021/01/01
キーワード:
≪全文≫

●日本のコロナ問題を欧米・南米と同じように扱ってはいけない


 新年明けましておめでとうございます。本年(2021年)もテンミニッツTVをよろしくお願いいたします。

 今日は年頭にあたって、3点お話ししたいと思います。1つはコロナの問題ですね。それから2番目は世界および地球の問題についてです。最後に、その中で日本が2021年から未来に向けてどうするか、についてのお話にさせていただきます。

 まずコロナなんですが、(2020年)世界では欧米、南米はいかにもパンデミックというような大変な状況で、100万人に約1000人、つまり1000人に1人の方が亡くなっています。アメリカ、イギリス、フランスあたりも100万人に約1000人という数なのですが、一番ひどいベルギーあたりは(100万人に1600人という数字ですから)本当に大変な状況です。

 ところが、日本はそれと比べると100分の1に近いわけです。これを同じように取り扱ってはいけない、と私は思っています。


●日本のとるべき道は社会を開くこと


 一方、自殺が増えているんです。ここ数年、自殺はずっと減ってきていました。ところが、自殺が前の年より増え始めて、10月には前の年よりも約600人(614人)多くなっています。主な原因はコロナ以外には考えられないと思うのです。コロナで職を失ったり、うつになったり、あるいはドメスティック・バイオレンスといった話がありますが家庭の中の状況が悪くなったりするなど、そういう形で自殺された方が約600人(614人)増えたということです。これについて、私は最初から言っているんです。コロナでロックダウンなどをして社会を閉じれば、それは社会を止めることになるんだから、必ずうつだ、自殺だということが増えてくる。これが現実のものになっているわけです。

 コロナを無視しろとか、あまく見ろと言っているのではないのですが、PCR検査を十分にやって、高齢者、あるいは医療機関、ケアハウスというようなところをしっかり守っていく。日本が目指すところは、「日本はコロナをいろんな形でよくコントロールできた。したがって、経済も落ちなかった」ということだと思います。

 では世界的にコロナを見るとどうか。これも私たちがテンミニッツTVで言っていたことですが、サイエンスは非常に進んでいます。当初、ワクチンが開発されるまでには2~3年はかかるというのが日本の識者のほとんどの意見でしたが、テンミニッツTVでは、いろいろ考えてみるとおそらく1年以内にできるんじゃないかと言っていました。

 それは科学技術のトップの人たちが、必死で世界中で取り組んでいるからです。そうすると、どこかが成功することになる。今、アストラゼネカとかファイザーとかが、そろそろ供給できるという形になってきたわけで、これまでテンミニッツTVで申し上げてきたようなことになっているので、われわれは科学的な思考を十分に背景として政策を決めていかなければいけないだろうと思います。これがコロナに関する話です。


●アメリカの政権移行による世界の常態回復に期待


 第2に、世界、地球に関する話です。なんといっても今年、アメリカではトランプ政権からバイデン政権に移行するわけですが(移行があまりスムーズにいっていない、という意見がありますが)、その「移行する」ことの意味が世界にとっても非常に大きいと思います。

 それは、2015年にSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)が国連で宣言されましたが、同じ年にパリ協定でCO2をゼロにする、地球温暖化を止めるという決意を世界が合意したことに関係があります。ここからトランプ政権が離脱しました。それから、SDGsにも逆行するような動きが非常に目立ったわけです。やはり歴史が大きく変わっていくときには、直線的に進むということはないわけで、いろいろと擾乱がありながら進んでいくのです。トランプ政権は擾乱だった、と思いたいですね。いずれにしても、2021年はバイデン政権に代わって、パリ協定に復帰してSDGsの方向に向かうでしょう。これはいわば常態に復するということだろうと思うので、非常に希望の感じられるところです。

 一方で今後の世界は、やはり米中の覇権争いという大きな軸で動いていくのだろうと思います。これに関してはいろいろな先生方がお話しになっていることをぜひお聞きいただきたいと思います。


●デジタル化、規制緩和、地方創生――菅政権が進める政策の重要性


 最後に日本ですね。菅政権が2020年に発足しました。私は菅政権が掲げている政策は、きわめて真っ当なものだろうと考えます。特に私が注目するのはデジタルです。これは日本が弱い、遅れてしまったところです。ここに対してデジタル庁をつくる、と。いろんな人がインターネットを見てグーグルをひく、というようなことから類推する...
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