マルクス入門と資本主義の未来
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
マルクスが『資本論』で説く「搾取」と「剰余価値」の真実
マルクス入門と資本主義の未来(3)労働価値説と「搾取」の概念
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
労働価値説では、生産に用いた労働に基づいて価値が生まれると規定した。リカードはこの説に対して一貫した態度を取らなかったが、マルクスは一貫して労働価値説に傾倒し、剰余価値を資本家が掠め取る「搾取」という概念を定式化した。『資本論』はこの議論を厳密に証明し、当時の人々に大きな衝撃を与えたのである。(全10話中第3話)
時間:10分17秒
収録日:2020年9月9日
追加日:2021年1月7日
≪全文≫

●リカードの労働価値説への態度は一貫していない


 それでは、三回目の講義を始めます。前回お話しした労働価値説について、もう少し詳しくお話ししようと思います。

 経済学では、ものの売買を基本的に扱いますが、その売買のための場所を「市場(マーケット)」と呼びます。マーケットではものの値段が決まっています。もう少し高ければ、あるいは安ければ良いと思っても、思い通りにはコントロールできません。市場には客観的な法則性があり、それに基づいてものの値段が決まっていくのです。このものの値段を決定する法則が「価値論」です。

 価値論には二つの考え方があります。一つは需要と供給の量に基づいて価格が決定されるという需要供給論です。これはその通りなのですが、需要と供給が何によって決定されるのか分析する必要があります。そのため、需要と供給についての理論が必要となるのです。需要と供給が価格を決定するという理論は多くの人が思いついていたのですが、需要や供給そのものについての議論は構築するのが難しく、マルクスの時代にはまだ生まれていませんでした。

 リカードはそのような側面も認識していましたが、需要供給論とは異なる労働価値説を考えつきました。ものの値段は常に変動しています。その根本にある法則として、生産要素のうちの労働力が全ての価値を決定していると打ち出した仮説です。この点は、アダム・スミスも直観的に認識していましたが、リカードはより明確に主張しました。

 資本は価格の変動に寄与していないのでしょうか。よく考えてみると、機械にせよ工場にせよ、資本は生産された財です。ですので、資本には価値がありますが、資本に体現されている価値は、もともと労働者がそれをつくり出すときに生み出した価値なので、結局労働力に還元することができるのです。したがって、過去の労働(の現れである資本)と現在の労働が組み合わさって、新しい商品をつくり出すのです。過去の労働は保存されていて、新たな商品に移っていかなければなりません。「労働の転形問題」と呼ばれます。

 土地については経済の中では生まれないので、もう少し説明が難しくなります。リカードは土地について差額地代説を出しました。簡単に説明すると、土地には一等地、二等地などの等級があります。良い土地では、同じ量の労働でも比較的多くの小麦が生えます。二等地では...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本を復活させる国家戦略(1)戦後の復興戦略と日本経済の凋落
「所得倍増」はなぜ成功したか…日本経済の回復のヒント
島田晴雄
資産運用の思考法…経済や市場の動きをどう読むか
市場予測のポイント…短期・中期・長期の視点と歴史的洞察
養田功一郎
紛争が絶えない世界~私たちは何ができるか(1)「戦争の世紀」から再び戦争の時代へ
再び戦争の時代へ――私たちは何を考え、どう動くべきか
小原雅博
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
核DNAデータで日本人のルーツを探る…アフリカから日本まで来た行程と時期は?
斎藤成也
「満洲」から考える日本とアジア(6)21カ条の要求と第一次世界大戦
日本が中国に出した「21カ条の要求」の罠と必然…不安定な満洲利権を手にした日本が直面した難題とは?
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
アメリカの理念と本質(1)西洋文明の行き着いた先と三つの建国
アメリカの理念と本質とは?…まず「三つの建国」から原点に迫る
中西輝政
「ホメロス叙事詩」を読むために(7)オデュッセウスの冒険
ホメロスの『オデュッセイア』が描く苦難と誘惑の冒険譚
納富信留
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
資産運用の思考法…経済や市場の動きをどう読むか
市場予測のポイント…短期・中期・長期の視点と歴史的洞察
養田功一郎
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫